『中南米の神話物語 母と子の世界むかし話シリーズ20』 監修=坪田譲治

1973年
研秀出版
500円
90頁
装丁:篠田昌三
私は「あれが欲しい! これが欲しい!」と言えない子どもでした。そう言うことをいけないことのように思っていた気がします。友だちが皆持っていたローラースルーゴーゴーも欲しいと言えなくて、遊んでいる友だちを横目で見ていました。なのであまりおもちゃは持っていなかったほうだと思うのだけれども本だけはたくさん持っていた。今もあるのかどうか知らないけれど、当時は毎月本を届けてくれる出版社がありました。このシリーズもそのひとつで、全20巻。子どもの頃の本はあまりとっておいていないのだけれども、このシリーズはきれいに揃えて残してあって実家に置いているのですが、この20巻目だけは手元に持っています。

『イギリスのむかし話』『日本のむかし話』という風に、一つの国や地域ごとに一冊になっていて、15巻目からが神話物語に。14巻目までは大きなひらがなの子どもが読む部分と、小さな漢字交じり文とで構成されていて、親子で一緒に読むようになっています。15巻目以降は簡単な漢字交じり文(ルビ付き)だけになっている。いろんなイラストレーターが使われていて変化があって楽しいし、こんなすぐれた子どもの本はないと思うくらい。載っている物語は他ではあまりにみないようなマイナーなものが多いのだけれど、楽しい話、悲しい話、取り混ぜてバランスよく入っていて、どんな子どもでも「私、この話が一番好き!」と言える物語が入っているのではないかしら。そして繰り返し繰り返し読んだのだけれども、最初に読んだ幼稚園生の時から、なぜかこの20巻目が気になって仕方がなかったのでした。

さて、幼稚園から小学校五年まではキリスト教系の学校に行っていたのですが、親は別に深い考えがあったわけではなく、単に近くだからという理由だったのだけれども、子どもは真剣です。毎日お祈りをしていれば神様は助けてくれるものだと信じていた。でもそんなに祈っているのに不条理なことは起こる。それにシスターが感情的に怒ったり、けんかをしたりイジメたりしているのを見るにつれ、もしかして神様はいないのではないか、と思い始めてしまったのでした。
神様を信じていた子どもにとって、神様がいないかもしれないって事は大問題です。必死で神様を探しました。でも教会に行っても、お寺に行っても、神様はいなかった。私が神様を見つけたのは・・・この本の中でした。

中南米の神様はとってもいい加減。間違うこともあるし、失敗もするし、人間をねたんだりさえもする。神様は、唯一絶対の常に正しいものではないんだ、と思ったら、子供心ながらすっかり楽になりました。勿論そういう神様が出てくる神話は中南米のものだけではありません。でも苦しくなるほど惹きつけられて、そして「中南米ってどんなとこ?」といろんな本を調べていくうち、2つの風景が頭に焼き付いてしまった。一つはジャングルからピョコピョコと頭を出す神殿たち(この風景は実際にグァテマラで見ることができました)。そしてテーブルマウンテン(こちらはマヤ文明の地ではないけれど)。それらの写真は「ここには神様がいるよ」とうったえかけてきた。

人生で一番影響を受けた本をきかれたら、迷わずこれをあげるでしょう。なにせ神様を再発見した本ですから。本の中にいた神様が実際にいたかどうかは……グァテマラ旅行記で。

で、実は神様がいるのでは? とこのシリーズを読んで思ったもう一つの場所が北欧。北欧の神様は、神様のくせに、イズンの若さのリンゴを食べていないと老いて力を無くしてしまう。オーディンは一番偉い神様なのに、もっと知識を得るために自分の片目と交換でミミール鬼の泉の水を飲む。火の神様ローキーは、神様なのにある日鬼の仲間入りをして神様と戦う・・・そういった神も鬼も人間もごった混ぜ、そして時には鬼の方が神様よりも強かったりするのがこれまた気持ちを楽にしました。そして北欧の風景写真は、とっても美しいのに、なんか恐い。そういうわけでいつか北欧にも神様を探しに行きたいと思っているのです。

マヤの神様についてのもっと詳しいことは、次にこのコーナーにアップする予定の『ポポル・ヴフ』のところで紹介しましょう。それから別にキリスト教を否定するつもりはありません。神様が「いる」ということと「信仰する」ということは全く別のことであって、グァテマラに神様がいるからといって、私がマヤの宗教を信仰しているというわけではないですし。ただデリケートな問題ですので、もしも気分を害した方がいらっしゃいましたらお詫びいたします。

2000年09月14日(木)12:30 by PINO - Category: latinamerica
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