『こうして生まれる 受胎から誕生まで』 アレグザンダー・シアラス

from Conception to Birth a Life Unfolds by Alexander Tsiaras/ バリー・ワース=文/ 古川奈々子=訳/ 中林正雄=監修

ISBN-4789719626

2002年
ソニー・マガジンズ
3800円+税
292頁/並製
妊娠中、お腹の中の様子は不鮮明な白黒のエコーでしか知ることができなかった(って最先端の産院ではカラーの3D画像が見られるらしいけど)。それでも最初のうちは全身写っていたから「おお、頭だ! 足だ!」とわかったけれども、途中からは部分しか写らないからますますわからない。おまけに産院はいつもものすごく混んでいるから「これは何ですか?」なんてのんびり先生に聞ける雰囲気じゃなかったし……「元気に育っているならいいや」とあまり真面目に画面を見ていなかった私です。

本書ではタイトル通りまさに“受胎から誕生まで”が時系列を追ってリアルなCGで再現されている。ではもしも妊娠中にこの本に出会えていたら。「いま6ヶ月だから……まあ!もう指の爪まできちんと生えているのね」なんて楽しい気分になれるかというと、そうでもない。妊娠に気づいた時点ではもう胎児の身体はだいぶできているからこの本のかなりのページは終わっている、というせいもあるけれども、たいていの妊婦は、お腹の中には生まれてくるカワイイあかちゃんをそのまま小さくしたようなのが入っている、と思っているのではなかろうか。それが実際は、魚のように目が離れていて、目のすぐ横に耳があって、皮膚から内臓が透けて見える(本書ではわかりやすいように実際以上に透けて見えるようにしているから余計に)グロテスクな生き物だとわかったら……あまり胎教によろしいとは思えない。

多分、妊娠中の母親よりも、むしろ父親が読んだほうがいいのではないかと。母親はいつも「あ、けっ飛ばしてる。あ、しゃっくりしてる」など胎児の様子を肌で知ることができるけれども、父親は母親が言葉にしないかぎりわからないし、説明されたところでやはり“身体の内側から蹴られる”なんて感覚はわからないのだから。本書を読むことで少しでも父親が母子に近づくことができれば、それは素晴らしいことだと思う。

あとは中高生かな。“グロテスク”と書いたけれども、それでも胎生44日目くらいからだいぶかわいくなってくる。それまでは肉を集めたみたいだったのが、手もしっかり5本の指に分かれてパーツパーツができてきたせいだと思うのだが。1ページ大の大きな画像を見て「こんなにちゃんとできているんだ」と隣のページを見ると“実際の大きさ=13.0mm”とあってビックリ。こんなに小さくてももうヒトの形をしているんだよ。これから中絶しようとしている人に「お腹の中ではこんなに育っているんですよ」なんて本書を見せるようなことはもちろんしたくない。それでは産院の前で“人殺し!”なんてプラカードを振り回しているヒステリックな集団と一緒ではないか。けれども「自分にはまだ妊娠なんて関係ないわ」と思っている年齢でこれを見ておくことはいいと思うよ。もちろん男の子もね。

最終更新日時:2007年01月16日11:04:15
2003年02月04日(火)05:55 by PINO - Category: bookguide
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月の裏側 @星の天幕 blog版
『こうして生まれる』: 最初は新聞の書評で見たが、その後ここで発見し、購入したもの。 ともかく写真(CG)がたくさんあって、飽きない。人の身体はこんなふうに形作られて行くんだなあという不思議な実感が得られる。
2004/11/28 07:07
月の裏側 @星の天幕 blog版
こっちは発見!: ずっと謎だった、はてなアンテナ http://a.hatena.ne.jp/no6/?gid=23618 の主を発見。 と言うか、再発見。 なんと、三箇所くらいつながりのある、でも一、二度くらいしかお会いしたことのない、旧知?の方でした。
2004/07/27 19:07

コメント

ぴのさん:当直先の産婦人科医院で、この本を見つけました。僕自身産婦人科医師を数年していますが、CGの綺麗さはまさに感動ものですね。今度の結婚記念日に嫁さんにプレゼントしようと思っています。
2005年05月02日(月) 17:28

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