ISBN-4872336968
2002年/太田出版
1300円+税
240頁/四六並製
イラスト:タケイ・E・
サカエ
「アトピー」という病気は私にとって今までは遠い世界のものだった。皮膚がカサカサして赤くなるらしい、治療にはステロイドを使うらしいけれどもそれは長く使うとヤバい薬らしい、くらいのことしか知らなかったし。周りにも一目でわかるほど重症な人はいなくて、友人の弟、とか知人の奥さん、とかほとんど会うことのない別の部署の同僚、がひどいアトピーらしいといった話を聞く程度。
それが一気に身近な問題になったのは今年の4月。入ったばかりの保育園の看護婦さんから、ムスメの耳の周りとおでこがカサカサしていて掻いているので皮膚科に行くように言われた。電話帳で見て行ったS皮膚科は激混みでさんざん待ったのに診察でS女医は一目診ただけで
「あ、これはアトピーですね。どんどんひどくなりますよ。コレ(ステロイド軟膏)塗って、コレ(抗ヒスタミン剤)飲ませて下さい」
とのこと。で、
「また明後日(その皮膚科は月・水・金しか開いていない)来て下さい。あ、大変でしょうからお子さんは連れてこなくていいですよ」
って患者を連れてこなくていいとはどういうことだ? と疑問に思ったのだけれども2日間薬をつけたらキレイに治ったので、報告のつもりで一人で行ってきた。
「おかげさまでキレイに治りました」
と言う私に
「薬続けないとまたヒドくなりますよ、また出しておきますからね。それから明後日も来て下さい、次からは抗アレルギー剤にしますから。お子さんは連れてこなくていいですからね」
?! 診察もしないで薬を変えるのか? 一昨日の薬だってまだ残っているし。頭の中は不信感でいっぱい。まだ0歳なんだから極力薬なんて飲ませたくないし……と私は薬を飲ませるのも皮膚科に通うのもやめてしまった。再発したら別の医者に行けばイイや、と。で結局アトピーというか、カサカサはそれきり出ることはなかったのだけれど。
もしもその頃本書を読んでいたらきっといてもたってもいられない気持ちになっていたことだろう。著者は重度のアトピーなのだけれども、その実態は私の想像をはるかに超えるものだったから。カサカサするだけだと思っていたアトピーは、ジュクジュクして膿や血がダラダラ流れてまでくるらしい。治療費は東京でも一軒家が買えるほどまでになるそうだ、私には到底払えない。そして子どものアトピーを苦に無理心中、なんて事件についても書かれていて、恐ろしくなってしまった。
アトピー疑惑がなくなってからだったから落ち着いて読めたけれど、なんでも皮膚科医はアトピー患者を診察せずに薬だけ出すらしい(勿論全部が全部というわけではないだろうけれど)。医者にしてみれば診察したからって治るわけでもなし、ってことらしいが……S女医もそうだったのか? だとしたら0歳児に対してひどすぎやしないか?
本の中で一番衝撃的なのは青森の薄場皮膚科なるところ。そこに入院した患者達はミイラさながらに全身包帯でぐるぐる巻きに。顔も白塗り。ご丁寧に著者近影にその時の写真を使っているので2度ビックリである。患者達はその格好で外食したり買い物したりするらしいが、町の人たちは慣れっこになっていて驚きもしないらしい。うーむ、そんなところが日本にあったのか。
もう一つの衝撃はプロトピックなる塗り薬。まず塗ると痛くなるらしい、しかも半端でなく。そんな薬大丈夫なのか? とこれだけでも思うが、もっとすごいのは1週間ぐらい続けると陶器のような肌になる、ということ。しかしそれも長続きはせずリバウンド、そしてまた薬を塗り……の繰り返しらしいのだが、もうそれがいかにもヤバい感じでそんな薬を売っていることだけでも信じがたい。
書店ではアトピーのコーナーに置かれるらしいが、実際にアトピーで悩む人が読んだら「こんなになったらどうしよう……」とますます悩んでしまうと思うよ。だからむしろ「アトピーなんて私には関係ないわ」と思ってきた私のような人が読むべきだと思う。著者は笑えるエッセイのつもりで書いたらしいが……なかなか笑えないよ。