ISBN-4022574585
ISBN-4022574593
2000年/朝日新聞社
上:1400円+税
312頁
下:1400円+税
260頁
四六上製
装幀:中島かほる
カバー・本文/画:門坂流
新聞をとる時は、半年ごとなどに変えるのが節約術らしい。確かに一月ぶんタダになったり、洗剤やらビール券やら貰えてお得かもしれないけれども、どうも私は新聞が変わるのがイヤなのだ。慣れない紙面は読みにくいし、それに小説が途中になってしまう。しかし家人は平気でちょこちょこと新聞を変えるので、最近の連載小説はまともに読めたためしがない。
でも大体、新聞の連載小説ってどれくらいの人が読んでいるんだろうか。『
失楽園』も『
イン・ザ・ミソスープ』も元は新聞の連載だからそれなりに読んでいる人がいるのだろうけれども。
本作品が連載されていた当時、朝日新聞をとっていたのだけれども、結局途中で新聞をかえられてしまったし、旅行にいったりするとその間新聞を止めてしまうからちゃんと読むことはできなかった。でもこういうちゃんと読まないとついていけないような小説を新聞で連載するのもどうかと思うぞ。少しくらいとばしたって平気なようなものの方が向いていると思うのだけれども。
そんなわけでちゃんと読みたいと思っていたのだけれども、二分冊だし、物語の舞台が80年代の東欧という込み入った時代だし、楽譜など出てくるのに音楽に詳しいわけではないし……と読むのに時間がかかりそうだったので、なかなか図書館で借りられずにいました。しかし出産前の数日間という、おそらく人生でもっともヒマであろう日々に読むことができたのでした。
と、ここまで書いたのが出産前。あれから9ヶ月も経ってしまい、いざ更新しようとしたら、本の内容に全く触れていないことに呆然。なので以下、記憶をたどって書いているので思い違いなどあったらお許しを。
主人公マガキ(真垣だったか真賀木だったか…)は駐オーストリア大使。日本人音楽家の女性(名前を忘れた)がセンデスなる人物から買った100年前の楽譜に大事なメッセージが込められていると知って一緒に謎解きをする。
と書くと、その謎解きが物語のメインかと思うけれども、そうではない。謎は意外とアッサリ解けてしまう。でもその楽譜は100年後を予測していたかのように、動乱の東欧において重要な役目を果たすのだ。
誰もがスパイであるかもしれない、それゆえ常に人を疑っていないとならないような状態、やっとの思いで逃げ出しても家族はそこに残されたまま、そういった当時の状態は、物語の中とはいえそこに日本人が巻き込まれることでぐっと身近になってくる。これを読むと東欧についてもっと知らなくては、と思う。ところで今の子どもたちは世界史の授業で東欧について習うのでしょうかね。
緊迫感のある物語のわりには、最後はあまりにもあっけない。どうも新聞の連載小説ってNHKの朝ドラに通じるところがあって、最後の1週間はダラダラと余計なものになるか、それとも唐突に終わって後味が悪いか、のどちらかになるものが多い気がするのですけれども。
とまあ不満も残るけれども、読みごたえのある上下巻でした。音楽小説(?)というとどうも触手が伸びない人も多いのだろうけれども、数年前に読んだ本で、いつかおすすめに加えようと思っている『
悠久のソナタ』(中原毅志、TBSブリタニカ)など素晴らしかった。きっとこういう本は“音楽”を前面に出さない売り方をしたほうがいいのかも。
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門坂流氏は朝日新聞社から連載時の挿画を集めた画集も出しています。そっちの方が重厚でいい感じ。