『センセイの鞄』 川上弘美

by KAWAKAMI Hiromi

ISBN-4582829619

2001年/平凡社
1400円+税
280頁
四六フランス装
装丁:キャップ
題字・イラスト:吉富貴子
図書館に行って新着図書の棚を眺めていたら、この本を発見。早速借りてきたのだが、しおりひもが下がっていないところを見ると、一番乗りかもしれない。なんとなく嬉しい。

主人公のツキコさんは30代後半で、行き着けの飲み屋で高校の時の国語教師と出会う。歳は30以上離れている。このシチュエーションというのは私にはちょっと想像できないもので、まず行き着けの飲み屋、というものがない。ちょっと憧れはするのだけれども、現実にはなかなか一人で飲み屋に入れない。まあ一人で入れるようになったりすると、お酒は好きな方だから……経済的にも健康のためにも入れない方がいいのかもしれないが。それでもって、中高一貫の女子高だったから、男の先生なんてほとんどいなかった。大体学校まで遠かったし、その後引っ越しもしているし、で地元の飲み屋で偶然会うなんてあり得ないのだ。百歩譲ってあったとしても、私には先生と仲良くお酒を飲むなんてことはきっとできない。先生というものは、たとえ教え子の方がその専門分野では成功者であったとしても、やはり一生先生なのである。そのへんの距離の取り方がどうも私にはうまくできそうにない。

でもこの本の世界は、そんなふうに現実に置き換えるまでもなく、本の中で出来上がっているからいいのである。二人ともいい歳なのに『失楽園』のような粘着質な感じはなくて、なんともほのぼのとしている。それはこの作家ならではの独自の言い回しによるところもあるのではないだろうか。例えば告白するシーンでは
わたしたちはぼわぼわと話し続ける
というくだりがあって、そんな大それた場面なのに「ぼわぼわ」と話すとは! と思うのだけれども、この「ぼわぼわ」、なんとも良いではないか。いくつになったところでスマートな告白などできる人はほんのひとにぎりで、実際はみんなぼわぼわしているに違いない。

最終更新日時:2007年01月16日10:04:41
2001年08月09日(木)16:04 by PINO - Category: bookguide
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2006/02/02 13:01

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