ISBN-4062096838
1999年/講談社
1700円+税
468頁/四六上製
装幀:緒方修一
装画:板垣俊
前から気になっていた作家なのだけれども読むのは初めて。以前住んでいたK市の図書館では人気のようでいつも貸出中だったし、たまにあっても本がボロくてあまり読む気になれなかった。今住んでいるF市の図書館はたとえ人気作家だとしても、棚が空くほど貸出中なんてことはないし、本はきれいだし、新刊はどんどん入るし、人はいないし……私としては嬉しいけれども、税金の使い方としては間違っているんじゃないのか? そんなことはともかく。
彼女に興味を持ったのは、何かの書評に「ポスト宮本輝」のようなことが書いてあったから。宮本輝は結構好きな作家なので(その割にはまだここで取り上げたことがないけれども)。ところが読んでみると大分違う。宮本輝の本を読むと、寒い日の朝に速足で歩いているような感覚がある。体の中は暑いのに顔は冷たい、みたいな、読んだときの自分の状態に関係なくストレートにやってくるような……変なたとえですがうまく伝わるでしょうか。
この本にはそういうストレートさはない。若くして未亡人となった主人公、悠子は薬剤師として勤める診療所のハンサムな若い医師と恋愛関係になるのだけれども、その医師の父の誘いを断ることができない。若い医師ともういい歳をしたその父親なんて比べるまでもないではないか、どうしてその間で揺れるようなことをするのだろう、破滅を招くだけなのに、と最初は半ばあきれるような気分になるのだけれども、読み進めるにつれて、だんだんと彼女の気持ちがわかるようになってくる。でもこういった感情が理解できるのは女性だけなのではないだろうか。男性から見たらただ淫奔な女性、としか見えないに違いない。その気持ちは説明できないけれども、これは女性が書く本であり、女性が読む本なのだと思う。
そんな主人公たちの関係のせいで悲しい事件がおきるところで1章が終わる。数年間の手紙のやり取りの2章、そしてその後の3章からなるのだけれども、どうもその3章が好きになれない。突然の不治の病や、度重なる偶然に、急に物語は非現実的なものになってすーっと遠くに行ってしまう。これによって悲しいなりにもハッピーエンドとなるのだけれども、せっかくの女性にしか描けないせつない物語がただのメロドラマになってしまったようで残念。