ISBN-4839800324
2000年/メタローグ
1500円+税
A5並製/248頁
写真:福田稔+上林徳寛
実は以前はこのてのブックガイド本ってバカにしていました。だって「面白い本」じゃなくて「売りたい本」を全面に出しているのがみえみえだもの。出版者同士の力関係とかも影響している気がするし。こういう本を読むってことはまさにマスコミに踊らされているんだと。
しかし98年版からこの本を読むことになったのだけれど、これがなかなかあなどれない。全体にただようマイナー感。誰も知らないような本が絶賛されていたりして、これぞブックガイド、と思う。例えば一昨年末に出たガイドの類いはどれも『
永遠の仔』や『
白夜行』だらけだったけれども、そんな有名な本ならわざわざガイドを読まなくたっていろんなところから情報が入ってくる。しかしこの本では、たまに知っている本を見つけるとほっとする、ってくらいに知らない本だらけ。しかも年々マイナー寄りになっている気もするんだけど、本も執筆者も。
本の構成は毎年大体同じで、まずは、
作家、文学者、社会学者、脳科学者、写真家、映画監督、演出家、デザイナー、などなどの人たちが選んだ「今年の単行本・文庫本ベスト3」。
ここには毎年ちょっとしたお遊びのコーナーがついている。今年は「私の2001年○○への旅」。ちなみに過去には「私の2000年問題」やら「ことしのビビビ(もう死語?)」やら「ことしのマイブーム(これも死語?)」など。で、この欄にはちょっとセンスが出るというか、そんなことまで書かんでよろしいってくらい内輪話を暴露する人もいれば、「特になし」なんて何も書かない人もいる。せっかくだからこういうところでは遊んで欲しいのになあ。このコーナーでの壊れっぷりでは高山宏に勝る人はいない。学会に出席して何も得るものがなくて、戻ったホテルで見たAVにビビビ、という一昨年から壊れ始めて、去年の2000年問題ではズバリ「金(かね)」。本宅と妾宅にあわせて2人の妻、4人の子どもを養う生活の大変さを暴露。7年間一度も医者にもいけずに、虫歯が腐りはじめたらしい。でもって今年の号では虫歯以外の病気も発覚。旅どころではないようです。
「ベスト3」の間にところどころはさまれているのが「Book Wave 2000」。こちらは齋藤美奈子をはじめ、書評の専門の方が書いています。「
乳と蜜の流れる国」の蒔岡雪子さんの原稿もあるよ。
そして何といっても毎年楽しみなのが岡野宏文&豊崎由美の「対談ベストセラーを読む」。この人たちにかかれば柳美里の『
命』も『
話を聞かない男、地図が読めない女』も、もうボロボロ。もともとベストセラーをあまり読まない私は、これを読むとますます「読まんでいい」という気になってしまう。しかしとっても面白いのだけれども、でも現実に売れているのはそれらのベストセラーなわけで……と思うと出版にかかわるものとしては複雑な気分。
この対談のあとだと、宮台真司&速水由紀子の対談はすっかりかすんでしまう。また編集部が選ぶブックガイドのコーナーもあるのだけれども、対談で斬られている本もそれなりに無難に誉められていたりするところがちょっと甘い。
というわけでベストセラー嫌いな、ちょっとひねくれ者の本読みの方にオススメのブックガイド。