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ISBN-4877283986
2000年/幻冬舎
1800円+税
380頁
装幀:鈴木成一デザイン室
装画:藤田新策
恩田陸の名前を知ったのは数年前。niftyにはパティオというサービスがあって、それはインターネットでいったらパスワードつき掲示板のようなものでしょうか、で、私は本のパティオのメンバーに入っていました。そこは私が入会してちょっとして閉鎖になり、しばらく期間をおいてまた再開したのだけれど、リニューアルした雑誌が前よりもつまらなくなっているように、そこもなんか盛り上がらなくなってしまい、次第に常連も離れ……私ももう長いことアクセスしていないから、今でもそこがあるのかどうかは判りません。そこにいたその短い間の中でとてもよく覚えているのがJ氏にきいた話。彼は絶版になってしまった2冊の本を長いこと探していました。それは筒井康隆の『
残像に口紅を』と恩田陸の『
六番目の小夜子』。やっととある古書店でそれらを見つけて感想を教えてくれたわけです。『残像に口紅を』は一度使った文字は二度と使わない、という法則の元に書かれた本らしい。そんなことができるのか? 筒井氏だから出来るのかもしれない。でも、目的よりも手段が先んじているわけだから、内容はいまひとつだった、というようなことを言っていました。一方『六番目の小夜子』の方は大絶賛。で、やはり人気があったのか、その後復刊されて今では簡単に手に入ります。
次にその名前を目にしたのは、「ライアー」という映画のパンフレット。この映画は誰が殺人事件の犯人なのか明らかにされないまま終わってしまい、観る人がいろんな情報を繋ぎあわせて自分で推理しないといけないという厄介なものなのだけれども、パンフレットでは恩田陸、綾辻行人、あと誰だったかな、とにかく数人で座談会形式で推理をしていた。で、その時に、「謎の作家なので、顔や性別が判らないようにしてくれ」という注文が来て、なんだかなーと思ってしまった。作家というものは必要以上に素顔をさらけ出すことはないけれども、かと言って必要以上に隠すこともないんじゃないかと。「謎の作家」というスタンスを不自然に作り上げる必要があるのか?なんかその時点で私はこの作家にかなりのマイナスイメージを持ってしまいました。
しかしまあ、この人はネット上ではものすごい人気なのであります。メールマガジン「読書の素」を見ても、毎号のようにあちこちで誰かが取り上げているのが判る。この『月の裏側』にしても、発売以来毎号あちこちで目にしているわけで、って私もこれでその仲間入りをしてしまうわけですが、これをアップしたら他所様のサイトも見に行ってみようっと。
物語の舞台は九州の水郷都市箭納倉。そこで老女が続けて失踪し、数日後ひょっこり戻ってくる、という事件が発生。帯文によるとそれは「人間もどき」に盗まれたそうなのだが……。
読んでみて、とても文章のうまい人だと思いました。独特の世界がある。でも読み始めてすぐに、自分がついていけていないことに気付いた。追いつかなければ、と読むのだけれど、読めば読むほどその世界からは取り残されていき、結局は入り込めないまま終わってしまった。入り込めた人にはきっとものすごく面白い世界なのでしょう、人気があるのもよく判る。でも入り込めないと……ただ1冊の本を読んだ、という感じで残らない。主人公たちは自分たちだけが「人間もどき」に盗まれなかったらどうなるのか?と悩むのだけれど、まさに私は恩田陸ワールドに盗まれないまま読み終えてしまったのである。