ISBN-4041305039
1972年/角川文庫
460円+税
272頁
カバー:山藤章二
現在、筒井康隆布教活動中。といっても、いろんな人に薦めまくる、ってだけのことですが。現在、職場で2名ほど改宗いたしました。薦めるときにいつも迷うのが、何から読むか、ということ。彼の作品はあまりにバラエティーに富んでいるので。でまあ、大抵は私自身がはまるキッカケとなった『
家族八景』を薦めることにしています。2冊目は何にしようか、新しめのところからだと『
ロートレック荘事件』か『
文学部唯野教授』かなあ、と思っていたら、信者1号が勝手に『
邪眼鳥』を買って読んでいた。イカン、それは筒井作品にハマって、断筆を悲しんで、それから読むべきものなのだ! でも本人とても面白かったそうなので、まあいいか。本の読み方に決まりなどないのです。
その信者1号が「昔、『にぎやかな未来』というのを読んだことがある」と言うので、「何言ってんの、それは星新一!」と一笑したら、数日後、勝ち誇ったように持ってきた。あらま、ほんとに筒井康隆だ。
読んでみると、ものすごい初期の短編集らしい。商業誌第一作の「お助け」が入っている。このころの作品はSFショートショートで、そういえば当時は故星新一、小松左京と同じように扱われることが多かった気がする。新しい作品のような、入り込めない者には全く意味不明になってしまうようなめくるめく筒井ワールドはまだ確立されていないけれど、十分に天才の予感がする作品群。無駄がなくて……なにせ一番短い作品はたった五行しかないのだ。筒井信者として今までこれを読んでいなかったことを失態と思わせる一冊。
ところで、彼の断筆のキッカケとなった「無人警察」もこの中に収録されている。こんな初期のものの中から編集者が拾いだしてきて教科書に載せようとしたことになったばかりにあんな大事になったのか。しかし、筒井作品を教科書に取り上げようなどと思うあたり、絶対にその編集者は筒井ファンじゃないぞきっと。
これを見て思い出したのだけれど、昔の筒井作品のカバーは山藤章二だったんだなあ。彼の描く筒井氏の似顔絵はソックリだ。その後の一連の平野甲賀によるデザイン(『邪眼鳥』『ロートレック荘事件』など)もとてもあっていると思う。あの平野氏の「ゲラ読んでるのか?」とまで思わせるわが道を行くデザインがなぜか内容とピッタリ(筒井作品以外の平野氏のデザインは、ときに内容と合っていないことも……あわわ)。でも最近の『
わたしのグランパ』とか『
エンガッツィオ司令塔』とかはいまひとつ手が伸びないデザインなんだけど(誰のデザインだ?)。私の勤務先でも一冊だけ手がけたことがあるのですが、その後お呼びがかからず。筒井作品ならデザイン代はいらないからやりたい!とまで私は思うのだけれど、でもあまりに好き過ぎてきっとうまくいかない気もする。やはり平野氏にお任せして一ファンでいるほうが幸せかも。