ISBN-4480818154
2000年/筑摩書房
1400円+税
252頁
イラストレーション:
後藤えみ子
ブックデザイン:
鈴木成一デザイン室
『
永遠の仔』のラストには救いがなかった。なんかスカッと明るいものが読みたくて、金井美恵子を先に読むんじゃなかった、と思いつつ書棚を物色。そうだ、これがあった。前から手元にあったのですが、読まないでいるうちにいつの間にかベストセラーになってしまった。
遥洋子という人は関西じゃかなりメジャーなタレントのようですが、私はあまり知らなかった。土曜の朝のNHKの連ドラを寝坊して見そびれて、お昼に見ようと早めにテレビをつけると「生活笑百科」に出ている、ぐらいの知識しかなかった。その人がなんで?東大で?上野千鶴子に?ケンカ???と謎だらけ。
上野千鶴子の方も、実は会社にも本がいろいろあるのだが、読んだことはない。だいたいフェミニズムというものにはあまり興味が持てなくて、例えば女性知事が土俵に上がるの上がらないのなんていうのは小さいんじゃないかと。相撲を取りたいっていう女性が土俵に上がるんならともかく、たかだか賜杯をさずけるってだけのことで騒ぐなんて……とあまり書くとまた反感を買いそうだけど。
なのにこれを読む気になったのは、タイトルと帯文と導入数ページの面白さ。ちなみにこの本の編集者は、ご自身も東大教養学部卒で本も出し、テレビにも出るユカリ様こと藤本由香里。
内容については最近いろんなところで取り上げられているので、ここで詳しく書くまでもないかもしれないけれど、著者が東大で上野千鶴子にフェミニズム(というか社会学)を学び、そこで春休みに「ここで学んだことをエッセイ形式で提出せよ」という課題が出て、これがそのレポートなのだそう。
で、ベストセラーになったから、あちこちの書評サイトで見かけるのだけれど、どこでも「フェミニズムをわかりやすく紹介した」「フェミニズムの導入書として高校の教科書に」みたいに言われていますが、私としてはやはりこれを読んだぐらいではフェミニズムに共感はできないわけ。ただこれを読んで強く思ったことは「勉強ってすごいことだ」。
私は子どもの頃に「勉強しなさい!」なんてことを特に言われなかったせいか、勉強は嫌いではない、むしろ好きだ。それでも勉強がいやになった時期が数年だけあって、それがちょうど大学時代なのである。誰だって受験勉強なんかしたら、いやになると思いません? そんな時期に親元を離れて、女子高から共学になって、だいたい大学なんてしばらく行かなくても呼び出されるわけじゃなし、試験だってわけわからなくてももっともらしいことを書いて言いくるめるだけの文章力があれば……というわけでおそらく一生のうちでもっとも勉強に適していたであろう時をもっとも勉強しないまま過ごしてしまったわけ。このことは後々ずっと後悔の種になっていたわけなのだけれど、この本を読んでまた再認識してしまうことに。東大でもないし、上野千鶴子みたいな恐い(?)先生もいなかったが、それにしても勉強でこんなにも苦しんだことも困ったことも、ましてやドーンと音がするほど感動したことなんてない。
これを教科書に、って意見を先に紹介したけれど、高校生がこれを読んだからってフェミニズムに興味を示すとはあまり思えない。それでも勉強は音がするほど感動するもの、ってことと、言葉で戦えるものは強い、ってことは若いうちに知っておいたほうがいいことだ。
最後に帯文にもなっている物凄い言葉を。
「相手にとどめを刺しちゃいけません。」
(中略)
「なんで? なんでとどめを刺しちゃいけないんですか?」
「その世界であなたが嫌われ者になる。それは得策じゃない。あなたは、とどめを刺すやり方を覚えるのではなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい。」
私は鳥肌が立った。やっぱ、本物だ、と思った。
「議論の勝敗は本人が決めるのではない。聴衆が決めます。相手をもてあそんでおけば、勝ちはおのずと決まるもの。それ以上する必要も、必然もない。」