『小春日和 インディアンサマー』 金井美恵子

by KANAI Mieko

ISBN-4120017516

1988年/中央公論社
1200円+税
224頁
装幀・装画:金井久美子
ナミギンの芝居を観た後に編集者M嬢とお茶を飲んでいたら「金井美恵子、好きでしょ」と言われてビックリ。というのも本を読んだことはなかったのだけれど、気になってちょうど本を借りてきたばかりのところだったので。
で、なぜ読もうとしたかというと……出版社が出しているPR誌にもいろいろありますが、そのうち毎号手元に届くのが幻冬舎の「星星峡」と朝日新聞社の「一冊の本」。「星星峡」は小説が中心で、なんか私は連載小説ってあまり好きになれないんですよね。特に長編はやはりまとめて読みたい。それにMessageBoardにも書いたことがありますが、幻冬舎の本とはなんか相性が悪いのか売れている本はいっぱいあるのだけれど、読んでみてすごく面白かったことって少ないんです。
一方「一冊の本」の方は、毎回特集テーマがあって(今月は山の本)対談があったり結構硬め。なかなか全部は読めないけれど、内容の濃さではこちらに軍配でしょうか。で、最近までここで金井氏が連載をしていまして、ちゃんとは読んでいなかったのだけれど、テンポのよい文章に何となく魅かれて読む気になったのでした。ちなみにその連載の方はちょうどこの『小春日和』の続きのようでして、もう単行本も出るはず。
さて読み始めて見ると結構ハマる。桃子という名の主人公が東京の大学に入るにあたり、目白にすむ小説家の叔母さんのところに居候することとなり、花子という友人ができ……と特になんてことない話なのだけれど、ハマる理由は桃子と私が全くの同世代で、学生時代に自分が思っていたことなどを思い出させてくれるから。大学に入ってみても何が面白いということもなくて、親元を離れたのをいいことに惰眠を貪ってみたり映画を観たりして暮らしていましたからまさに桃子とそっくり。出てくる映画のタイトルもまさに当時観たようなものだし、封切館ではなくてちょっとマイナーなところに行って安く観たり……いちいち懐かしい。友人の花子の本名は実は「ありさ」なのだけれど、今でこそ普通の名前だけれど当時は恥ずかしい名前なのであり、その辺もわかっているなあという感じ。そして何よりもツボにハマったのは、花王のバブという入浴剤がありまして、これは入れると炭酸ガスの泡が出るのだけれど、その恩恵にあずかれるのは最初に入浴する人だけで、次に入る人の時にはもう泡はすっかり消えている。泡が消えても温浴効果はあると書いてあるのだけれど、でも泡がなければ他の入浴剤と変わらないわけ。実家にいるとなかなか一番にはお風呂に入れないから、バブのお風呂に入れるっていうのは独り暮らしのちょっとした醍醐味なのであります。桃子はバブのお風呂に入って、体毛に気泡が付く様を見て「子持ち昆布みたい」と思うのだけれど、その辺の感想もまた私と一緒だなあ。尤も私は2年生まで寮でしたから初バブは桃子より2年遅れることとなりましたが。
著者は少女小説のつもりでこれを書いたそうですが、大学生を少女と呼んでいいのかどうかはおいておいて、その年代の女の子をリアルに描く観察力とセンスに脱帽。お気に入り作家になりそう。

2000年04月03日(月)13:09 by PINO - Category: bookguide
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