『第三の嘘』 アゴタ・クリストフ

La Troisi`eme Mensonge by Agota KRISTOF/ 堀茂樹=訳

ISBN-4152077492

1992年/早川書房
1553円+税
224頁
装幀:高木桜子
予告通り読みました『第三の嘘』。そして……うーん、ネタバレなしでは語れないので〈以下『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』のネタバレ注意〉『悪童日記』を読むときは、あの淡々とした語り口に追い立てられるように一気に読んでしまった。あの文体には有無を言わせないような強さがあった。そしてあのラストにはそれまでぐいぐいと引っ張られていたのに、突然その手を離されて放り出されたような、呆然とする感じがあった。で、当然『ふたりの証拠』では離れ離れになった二人のそれぞれの日記なのだろうと思った。しかし実際は日記ではなかったし、二人の片割れ、リュカ(という名前もここで初めて知るのだけれど)の話ばかり。だいぶ普通の話になったなとちょっとガッカリもするのだけれどまたしても最後になって衝撃を受けることになる。それは今まで読んだすべてを覆すようなものであった。『悪童日記』を読んだときは、続きは読みたいけれど、でも読まなくてもいいような気もした。けれど『ふたりの証拠』を読んだら続きを読まないわけには行かないのである。で『第三の嘘』を読み始めたのだがまだ『ふたりの証拠』の最後の、すべてが嘘だったかもしれないということが信じられずにいる。すべてがクラウスが書き上げた嘘だったと。それならリュカはどこにいる?そしてリュカが身分証明書を手に入れに行く話を思い出す。それにもかかわらずリュカの存在証明がないということはそもそもリュカの存在自体がクラウスの嘘だったのか、と。そんな疑問だらけの頭で読むから、なかなかうまく理解できない。それが途中でふいにすべてがつながる瞬間がある。でもその後は辛く悲しい。まさに知らないほうがいいことを知ってしまった感じである。ベストセラー『悪童日記』を読んだ人のうち何人がその後の物語を読んだだろうか。続きを読もうとする熱烈なファンだけをこのような辛い世界に陥れるのだからなんと恐ろしい作家でしょう。恐ろしいといえば、『悪童日記』が86年で『第三の嘘』が91年だから5年も先に種明かしをするつもりでこのような恐ろしい嘘の物語を書いていたのかと思うと背筋が寒くなる。が、訳者後書きを読むとどうも最初からこんな壮大な嘘をつくつもりで書いていたわけではないらしい。しかし、そのつもりがなくてこんなにつじつまの合うような嘘がつけるものだろうか? もしかすると、この『第三の嘘』ですべての謎が解けたような気がしているけれども、本当はこれもまた嘘なのかもしれない。なんとも油断のならない作家である。
ところで、この本(『ふたりの証拠』も)カバーのどこにも『悪童日記』の続編であることが書いていないのだけれど、それってまずくない? 知らずに続編から読み始めてしまったら、なんだかわけがわからないと思う。きっと帯には書いてあったのだろうけれど。
読み終わってもう一度『悪童日記』から読み直したらまた面白いと思う。これ並製でもっとシンプルなカバーで三冊セットにしてくれたら絶対買うのに。早川書房じゃ無理か?

2000年03月24日(金)12:35 by PINO - Category: bookguide
« 『動物のぞき』 幸田 文 | home :: archive | 『ダスト』 チャールズ・ペレグリーノ »

関連記事

『ふたりの証拠』 アゴタ・クリストフ: 1991年/早川書房 1553円+税 240頁 装幀:高木桜子同じ作家の2冊目を取り上げるのは難しい、ということを前回書いたばかりなのだけれど、またしても2冊目の作家。でもこれは以前書いた、ご存知『悪童日記』...
2000-03-18
『悪童日記』 アゴタ・クリストフ: 1991年/早川書房 1553円+税 248頁 装幀:高木桜子何を今さら、と言われそうですが、ベストセラーをタイムリーに読めないところが本を買わない人間の辛さ。ちなみに今話題の『永遠の仔』『白夜行』『五体不満...
1999-12-14

トラックバック

PukiWiki/TrackBack 0.1
☆URI/2005-07-12: ☆URI 今日のうりうり - 2005-07-12 * 『第三の嘘』 アゴタ・クリストフ - PINO's BookGuide URL: タイトル: コメント:
2005/07/12 21:09
PukiWiki/TrackBack 0.1
アゴタ・クリストフ: アゴタ・クリストフ †  ハンガリー生まれ 1935/10/30- アゴタ・クリストフ 『悪童日記』 『第三の嘘』 プロフィール ↑『悪童日記』 †  堀茂樹訳(早川書房)1991年1月 【現在は、...
2005/04/26 13:01

コメント

コメントはありません

コメントする

since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.