ISBN-4103077069
1994年/新潮社
176頁
装幀:新潮社装幀室
幸田文はご存知幸田露伴のお嬢さんで、この本の初出はなんと昭和34年の「
婦人画報」。でも全然古くさくない。著者が動物園やら競馬場やらに行き、見たこと、聞いたことを書いているのだけれど、和服を着たちょっと場違いにもみえるおばあさんが、目を真ん丸にしてちょこまかと動物の周りを動き回るさまが想像できておかしい。土門拳撮影の迫力ある動物写真も添えられています。
で、ちょっとおこがましいのですが、うちの母に似てる、と思いました。彼女ももう還暦を過ぎているくせに、好奇心の固まりのような人でなんともまあちょこまかとよく動く。動物園なぞに連れていった日には、あれ?いない、と思うと、小柄なのをいかして人込みをくぐり抜け、小学生に混じって最前列で見ている、という具合。飼育係の方が説明でもしてくれようものなら、またしても一番近くまで行って、頷きながらじっと見つめたりするものだから、説明するほうも適当に切り上げるわけにもいかず、長話になってしまいます。幸田さんに話をする飼育係の人もきっとそんな感じに違いないと、なんか可笑しくなってしまいました。
動物園を維持していくのってものすごくお金がかかりそうですが、それがあんなに安い入園料で見られるのだから、すごいことです。久しぶりに行きたくなりました。この連休中に行かれた方もいるのではないかしら。
大学時代の友人I嬢が「動物園なんてあんなむごいものは見ていられない」と言っていて、檻に入れられた動物たちがかわいそうだなんてそれまで考えたこともなかった私は自分の感受性のなさに愕然としたのだけれど、でも動物園の動物が不幸かどうかなんてわからない。そこでしか生きられない動物もたくさんいるわけだし、そういう野生でない、本来と違う生活をしているイコール不幸、っていうのも違うんじゃないかと。
動物のテレビ番組が好きでよくみるのだけれど、お正月にパンダの特集をやっていた。パンダは変な動物だ、もしかして滅びたいのではないか、とまで思ってしまう。というのもパンダには受精可能な日が年に二日間しかなくて、普通の動物だったらそれなら必死で相手を探すと思うのだけれど、孤独が好きなパンダは探したりしない。で、やっと子どもが産まれても、ピーピーうるさく泣く子どもにびっくりして逃げてしまったり、なんとか育て始めても、パンダってあの巨体を笹だけで維持するためには一日中食べていないとならないそうで、子どものせいで十分食事がとれないことに怒って途中で捨ててしまったりもするらしい。なので人間が必死になって保護して世話をするわけだけど、人があんなに夢中になるのもあの外見のせいで、もしかすると人に気に入られるためにあんな模様なのでは、とまで思ってしまう。
と、またしても本からどんどん離れていきましたが……ところでこの本、カバーがない、と思ったらどうも箱に入っていたらしい。箱入りの本って図書館に来ると悲しい姿になってしまいます。そして箱は何処に?