ISBN4-10-131512-4
1997年7月
新潮文庫
400円+税
224頁/文庫判並製
装画=寺門孝之
デザイン=新潮社装幀室
湯本さんの本を読むのは2冊目。
どんなに1冊目が面白くても、2冊目であれれと思ってしまう作家も多いが、この人の本はきっとどれも安心して読めるだろう、という気がした。
先に読んだ『西日の町』では母と息子とで暮らしていたけれども(“てこじい”なる祖父もいたが)今度は母と娘との暮らし。てこじいのかわり、と言っちゃあなんだが大家のおばあさんが階下に住んでいる。
世の中において、母と子の二人暮らしっていうのは決してメジャーな家族構成ではない。それなのに小説にはしばしばそういう設定が出てくる。その暮らしがやけに悲壮感漂うものだったりすると不快感を覚えるし、かといってあまりに能天気に暮らしているとそれはそれで腹が立つ。ちょうど現実世界で「大変ねえ」と言われると「そんなことない」と思い、かといってあまりに気楽そうに見られると反論したくなるのと一緒か。“母子家庭”とか“ひとり親家庭”といった言葉がなんか落ち着かなくて私は“コンパクトな家庭”と言うのだけれども、湯本さんの書く暮らしはまさにコンパクトだ。何か(誰か)が欠損している家庭ではなくて、そういう形であるだけで。卑屈になることもなく、かといって肩肘張ることもなく。だから読んでいて、その物語の中にいてとても落ち着く感じがする。
人を助けるということは、大きな声で「大丈夫?」と言ったり、これ見よがしに手を差し出すことじゃあない。一見偏屈なおばあさんはいろんな人を助けていたのだなあ。子どもの頃に貰った小さな言葉や事柄は、どんなに時間がかかっても必ず糧になるのだ。その小さな宝物さえあれば人は生き続けることができる。
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本文はLHM。