『濁った激流にかかる橋』伊井直行

Amazonで見る

ISBN4-06210259-5
2000年7月
講談社
1900円+税
348頁/四六判上製丸背
装画=岩本暁一
装幀=坂川栄治
朝日新聞のBOOKコーナー、しかし書評じゃなくて文庫の短い紹介を見て気になって借りてきた。
といっても実は結構借りるときに迷ったのである。タイトルも長めというかなんか説明っぽい感じだけれども、目次を見たら他のタイトルはもっと長い。「霧のかかる騒がしい橋からのひそやかな墜落」とか。『濁った〜』も初出のときはもっと長かったのを改題したものだ。だから内容も、説明っぽい、無駄に長いものじゃないかしらとちょっと心配したのである。
それでも借りてきて、袖の著者略歴を見ると。あれまあ、全く知らない作家だと思っていたのに、このサイトを作るよりも前に1冊読んでいるよ。その『ジャンナ』は猫が人になるんだか人が猫になるんだか忘れたけれども、なんか猫が理屈っぽく喋る話だったかな。その程度しか覚えていないということは、きっとそんなに面白くなかったに違いない。やはりこれを借りたのは失敗だったか、などと思いながら読みはじめたのですが。

いや、これ、面白いよ! すごく面白い。最近読んだ中で一番ってくらいに面白い。
物語は日本の、普通の風景のような顔をして始まる。そうそう、橋があると渋滞するんだよねえ、昔多摩川の向こう側に住んでいたからよくわかるよ。だからといって遅刻していいわけじゃなくて、うんうん、と思いながら読むが、どうやらこの橋はちょっと違う様子。その上で毎朝起こることは、とても単に渋滞と呼べるようなものじゃないし、まさに無法地帯で、橋から落ちたらしく行方不明になる人も日常茶飯事。
この表題作でもある1つめは、この橋が(そしてこの川や市が)どういうものか教えるための導入のようなもので、面白くなるのはその次から。9つの物語はそれぞれ独立しているけれども、でも微妙に登場人物が重なっていたりするのが面白い。橋(や川や市)は現実にはありえないものだけれども、そこに住む人たちは普通の日本人というか、こんなところに住んだらこうなるだろうと思える人ばかりで、だからこそ面白い。川は現実的じゃなくても、人々の行動はとってもリアルなのである。
しかしこれ、「群像」に3年くらいの間にぱらぱらと掲載されたのね。これは絶対本で続けて読んだ方が面白いでしょ。1年以上前の号に出ていた人と同一人物かどうかなんて絶対わからないって(笑)。

about book design...
本文は凸版明朝。

2009年04月20日(月)12:35 by PINO - Category: bookguide
« 『この世で一番大事な「カネ」の話』西原理恵子 | home :: archive | 『簡単ルールで一生きれいな字』富澤敏彦 »

関連記事

関連記事はありません

トラックバック

トラックバックはありません

コメント

コメントはありません

コメントする

since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.