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ISBN-4048733362
2002年1月
角川書店
1700円+税
240頁/四六判上製丸背
装丁=緒方修一
近藤史恵さんの最初に読んだ本は
『アンハッピードッグズ』。読みながらパリの冷たい空気を顔に感じるようなこの本ですっかりファンになってしまったのだけれども、この作品は彼女にとっては異色の作品らしい。その後
『天使はモップを持って』を読んであまりの違いに驚かされる。多分最初に『アンハッピードッグズ』を読んでいなかったら、そんなに気になる作家にはならなかったと思うのだ。あまりにタイプの違う2冊を読んだものだからもう1冊。どちらが本当なのだろうか、と。
この本は『天使はモップを持って』に近いかな。モップ少女が掃除するオフィスのかわりにこちらの舞台は歌舞伎の世界。『天使は〜』もミステリに分類されるけれども、起こる事件は人が死んだりするようなことじゃなくてオフィスで起こる些細な出来事。本書でも昔亡くなった人の死の真相について調べたりするミステリなのだが、結末はなんかこの人らしいなあ、と思う。残虐な、血みどろの事件が起こるばかりがミステリじゃない。悲惨な話はニュースの中だけでたくさんだ(いや本当はニュースの中にこそ出てきてほしくないのに。小説だけでたくさんならいいのに)。ここでは謎解きとか事件はある意味どうでもよくて、登場人物のちょっとした言葉や仕草に心を動かされる。例えばこんな言葉。
「自信なんかない。だから、確実に方法を選んで引き寄せるしかないんです。ぼくから見れば、欲しいものがありながら、なにもせず待っているだけの人間の方がよっぽど自信にあふれているように見えます。黙っていても運命が与えてくれると思っているみたいだ」
ミステリのジャンルに入れられるけれども、この人が書きたいのは人の心なのだな、きっと。だから『アンハッピードッグズ』のような恋愛小説も書けるのだろう。
about book design...
本文はLHM。
別丁扉が「ルーセンスJrはな」という紙で、透け感のある地にお花の型押しがしきつめられているとってもかわいい紙なのだけれども、使ってみたいと思いつつも個性が強すぎて使う機会のないまま廃盤になってしまったのだが、この本にはぴったりだ。