ISBN-439663238X
2003年11月
祥伝社
1700円+税
336頁/四六判上製丸背
装幀=新妻久典
カバー写真=奥林千明
横山秀夫というと硬派な警察小説のイメージがあるのだけれども、この本はちょっと毛色が違う。主人公・真壁は「ノビカベ」と渾名されるノビだ。ノビとは泥棒の中でも、深夜寝静まった民家に侵入して盗むという手口のこと。こういった符丁のような言葉が次々出てくるところや、警察の内部が描かれているところはいつもの通りだが、決定的に違うのは……。
真壁の耳の中では声がする。死んだ双子の弟の声が。それは幻聴などではなくて、真壁は彼と会話ができるし、記憶力抜群の弟は手助けにもなるのだ。こういった非現実的な設定が他の作品にはなかったところ(私が今までに読んだ範囲で、だけど)。取り上げられる犯罪もそんなに悲惨なものではなくて、人が死ぬ話もあるがもちろんノビである主人公が殺すわけはない。
泥棒の兄と耳の中にいる死んだ弟、その二人による謎解きは、普通の人には見えないようなものが見えているようで楽しい。シりーズにしていつまでも続けられそうな気がするが……そうはいかないことがわかる。兄弟の関係、親子の関係、そういったものから目をそらせていては先に進めないのだなあ。
about book design...
本文はイワタオールド。