『魂萌え!』桐野夏生

ISBN-4620106909
2005年4月
毎日新聞社
1700円+税
480頁/四六判上製丸背
装丁=藤田知子
装画=水口理恵子
桐野夏生さんの本を読むのは3冊目。
これは毎日新聞に連載されていたもので、新聞小説がいきなり「……霊柩車のドアが閉じられた。」なんて文で始まるのだもの、当時読んでいた人は度肝を抜かれたであろう。そういえば『メタボラ』も新聞小説で、私は留守にする間新聞を止めたときはその間のものはもらわないのだけれども(その分安くなるし)『メタボラ』連載時は取り置きしてもらってまとめて読んだり、出先でも新聞を読んだりして欠かさず読み続けたのであった。そんなにもはまった新聞小説はあれだけかもしれない。
そもそも新聞小説ってどんな人が読むのだろうか。新聞を読む人が必ずしも小説を読むとは限らない。景品目当てにまめに新聞を変えたりする人はまず読まないだろうし。家で、比較的のんびり新聞を読む時間のあるような人が対象だとしたら……それはまさにこの本の主人公の敏子のような人かもしれない。子どもたちも大きくなって家を出て、夫も定年になって。そういった読者を想定してこの作品を書いたとしたらなんともチャレンジャーというか意地悪というか。

配偶者が60過ぎで急死するのも、そして愛人がいたことがわかるのも(その愛人は決して親子ほど歳の離れた若いおねーちゃんではなくて、妻と大差ない相手だったりするあたりも)子どもたちと遺産でもめるのも、友人が痴呆になったのか心配になるのも、現実には十分あり得ることばかりなのに、多くの人は自分には関係ないことだと思い、しかしいざそうなったときに戸惑うのだろう。スパスパとそれらを解決できるわけでもなく、けれども時間はどんどん過ぎていく。そんな感じがとてもリアルで読みながら自分のことを考えて、不安になりぞっとした読者もいることだろう。

この人の本はとても面白い。でも諸手をあげて好きだー!と言えないものがある。なんか意地悪なんだよね、特に女性に。そこがまた魅力でもあるのだけれども。「妻」と「母」だけが肩書きであるような女性(それが普通だった時代もあるわけで)が放り出される様は、もしも実際に自分が同じような立場でも楽しめただろうか、不快になるのか身につまされるのか、専業主婦というものをやったことのない私には想像ができない。

この人の本ってどれも映画やドラマになりそうだなあ、と思っていたらこれはすでにドラマになっているのね。
最新作『東京島』も読みたいなあ。

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本文はOKL。

2008年06月19日(木)12:56 by PINO - Category: bookguide
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