ISBN-4093861471
2005年3月
小学館
1,400円+税
384頁/四六判並製
装幀=川村哲司
装画=奥原しんこ
最初に見かけたとき、なぜかNHKの朝ドラ「さくら」の原作だかノベライズだかだと思ってしまったのだ、時期的に全然合わないにも関わらず。なんかカバーの雰囲気もちょっとそれっぽいんだよね。
まったく関係のないものだとわかり、読み始めたのだけれどもやはり第一印象というのは恐ろしいもので、ドラマ「さくら」とは違うけれども、やはり朝ドラっぽい、狭い世界でこちょこちょとしたことが起きる、手軽に気楽に読めるようなものだとばかり思ったのだが。
読んでみたらそんな想像とは全く違うもので。
主人公の家族の中の、確かに狭い世界での物語ではあるのだが、狭いけどとても深い。狭いけど奥はとても広い。そんなお話。
物語は主人公が久々に実家に帰ろうとするところから始まる。新幹線のトイレで吐いたりして、どうやら主人公にはそういう性癖があるらしい。もしかしてメンヘルな人たちの話なのかなあ、そういうものを読みたい気分じゃないなあ、と不安になり、実家についてからもなにやら妙な雰囲気があってますます心配になるのだが、その後始まる主人公の回想にすっかり引き込まれてしまう。
主人公は3きょうだいの真ん中で、兄は伝説になるような人気者、妹は子どもの頃から振り返られるような美人(しかし性格はかなり暴力的)。よく働く父親と美しい母親はとても仲がいい。と書くととても素敵な家族のようだけど、実際とても素敵なのだけど、でもちょっと奇妙でもあるのだ。
古くさいホームドラマのようなものを想像して読み始めたから余計に、物語の中で起きるいろんな「いまどき」なことごとに衝撃を受けたりして。
奇妙ではあってもとても素敵な家族だから、それが壊れていくさまはとてもとても悲しい。ラストは明るいけど、でも失われたものは戻らないんだものなあ、この子たちがずっと、ずーっと子どもだったらよかったのに。
著者はイラン・テヘラン生まれの大阪育ちですって。デビュー作の『あおい』も読んでみたいなあ。
ちなみに「さくら」とは犬の名前です。
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本文はヒラギノ。
章タイトルや小見出しが書き文字になってる。カバーは3色。カバーのどこにも版元名が入っていないのね。