ISBN-4120037665
ISBN-4120037673
2006年9月
中央公論新社
各1500円+税
上:354頁/下:308頁
四六判上製丸背
装幀=松昭教
なんかあまり今どきの作家の本を読んでいないなあ、なにせ一番最近読んだのはチェーホフだし、仕事柄ちょっとまずかろう、と時折読んだことのない作家の本に手を出すようにしている。
で、馳星周。『不夜城』が映画になったせいもあり(デビュー作だったのね)なんとなくどんな本を書く人なのかぼんやりと想像できていたのだが。いろいろある中からこの作品を選んだのは、だいぶまえに朝日新聞の読書特集のときに載っていて書名をメモしておいたから。でもAmazonのレビューを見ると、この本はあまり馳星周らしくないらしい、なんでも「ノアール感」が少ないんだとか。なんだそりゃ。
主人公の元刑事が行方不明になった警視監の娘を捜すように頼まれるところから物語は始まる。娘の一癖ありそうな友人たちが出てきたところでこれからどんな謎解きが始まるんだ?とわくわくするが、それはあっさりと知れてしまう。どうやら謎解きを楽しむような本ではないらしい。楽しむべきは警察の権力争いなのね、と上巻は一気に読み終わり下巻に突入するのだが。
下巻になるとまた様子が変わる。権力争いは相変わらずなのだが、やつらはそのためならなんでもする、みたいなセリフが何度も出てくるけれども、いくら「なんでも」と言ってもあまりにドンパチやりすぎ、人が死にすぎでしょう。別に小説なんだから現実的でなくてもいいのだけれども、昔石原軍団の刑事ドラマが好きだったのだが『太陽にほえろ』ははまったのに『西武警察』はあまり見なかったのはドンパチ以外のストーリーの魅力の違いだ。で、この本も物語自体に惹かれないから、人が死に、主人公が強すぎると思わされるだけのシーンを繰り返すたびにしらけてしまう。
暴力だけでなく性的な描写も多いのだが、大人なのでそういったものを嫌うつもりはないのだけれども、全然官能的じゃないのね。だからやっぱりしらけてしまう。暴力や性の過激なものをてんこもりにして、どうだ!と出されても魅力を感じないよ。まるで電車の中でスポーツ新聞の後ろの方を見せられたような気分、と思ったらこの作品、「東京スポーツ」で連載されていた物なのね、なんとなく納得。
多分もうこの人の本を読むことはないだろうなあ、といってもあくまで嗜好の違いなので、こういうのが好きな方はいっぱいいると思うけど。