ISBN-4150011443
1971年5月
早川書房
HAYAKAWA
POCKET MYSTERY
BOOKS No.1144
330円
182頁/新書判並製
装幀=勝呂忠
一度読んでみたいと思っていたピーター・ディキンスン、まずはシリーズ最初のこれを。
薄いからすぐに読めると思いきや、なんか時間がかかる。小さい字でみっちり入った本文組のせいかと思うが、どうもそれだけではない。なんかどうも文章が古くさいのである。性格に言うと古くさいのは訳か。しかしまあそれも仕方ないだろう、本書が出たのは昭和40年代、訳者が生まれたのは明治37年なんだもの。ちなみにこの本、絶版になっているのだが、さもありなん、黒んぼとか野蛮人とかそのままでは今は出せないような言葉がいっぱい出て来るもの。
内容は本格ミステリ……のはずだがどうもミステリとしては弱いかな、犯人もその動機もいまひとつ。本書の面白いところはそれと別のところにある。殺されたのはクー族の酋長で、クー族とはニューギニアの谷間の民族だが太平洋戦争のときに白人飛行士をかくまったことから日本軍の襲撃にあう。そのわずかの生き残りがロンドンにやってきてアパートに籠って暮らしているのだ。一緒にいるクー博士は宣教師の子どもなので白人だ。人類学者の彼女にとってアパートで暮らすクー族たちは観察にもってこいな、まさにガラス箱の蟻(この邦題は絶妙)なのである。
読んでいて興味深いのはまさにその蟻、いやクー族なのである。奇妙な儀式や風習や。薄暗いアパートの中で繰り広げられるクー族の生活についてもっと知りたいなあ、と思ってしまう。事件よりもずっと。
about book design...本文は岩田細明朝。小さい字で2段組、あまり入りやすくはないね。
あとハヤカワポケットミステリってみんなこういう表紙じゃないですか。一度読んだ本をまた借りてしまったりしそうだ。