ISBN-4105900072
1999年2月
新潮社クレストブックス
2000円+税
304頁/四六版仮フランス装
Illustration=Matsuo Taiko
Design=Shinchosha
Book Design Division
12の物語からなる短編集。「巡礼者」ときくと宗教的なもののようなイメージがある。エルサレムとかメッカとか。しかし表題作に出てくるのはカウボーイたち、巡礼者という言葉はしっくりこない。で、あとがきを見て納得、pilgrimsには「新たな土地を目指す人」という意味もあるそうだ。だから開拓者もpilgrimだし、流行りの「自分探しをする人」もpilgrimなんだろう。
その最初の短編『巡礼者たち』を読んで、なんともコメントしがたい話だなあと思う。つまらないというわけではない。冷たい空気が肌で感じられるような、馬や人の息づかいが聞こえるような、けれどそのあとの感想が続かないのだ。
いくつか読んでいくうちに、ははあと思う。世の中の多くの小説には結末があるのだけれども、この短編たちのほとんどには結末がない。荒れた海で泳ぐ女の子たちは助かったのだろうか? 組合の支部長に立候補してそのあとどうなったのか? そういったことが明らかにされないまま物語は唐突に終わる。けれども現実はどんなハッピーエンドだっておしまいじゃないはずだ。「お姫様は王子様と幸せに暮らしました」と言ったところで、じゃあ幸せに暮らすとはなんぞや? その後一度も喧嘩もせず、後悔したり思い悩んだりしないのか? そんなのは夢物語で、現実とは物語が終わった後もいつまでも続くもの。唐突に終わるように思えるこの短編たちは、現実的な時間を切り取っているものなのかもしれない。物語が終わった後も登場人物たちはそのままそこで暮らしているような、だからこそ空気感があるのかもしれないなあ。
ところで。5つめの短編『トール・フォークス』を読みながら、どこかで読んだことがあるなあと思う。しかしその前までの話には覚えがないし、なにかアンソロジーのようなものに入っていたのかしら、と思うのだが。けれど読み進めて行くとその後も読んだことのある話が次々と。ということはこの本を読んだことがあるのか? でもサイトを始めてからはすべての本を載せているはず。本が出たのが99年2月、サイトを始めたのが同年11月だから本が出てからわりと早い時期に読んでいるとすればあり得ることはあり得るのだが……その頃はあまり図書館に行っていなかった気がするし、それに初めて読んだクレストブックスは『アムステルダム』だとばかり思っていたのに。なんかキツネにつままれたような気分で、途中からあまり集中できなくなってしまった。読んだ本を忘れてまた借りてくることなんて初めてかも。
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クレストブックスの本文は精興社明朝。