『美濃牛』殊能将之

MINOTAUR by Syuno Masayuki

ISBN-4061821237
2000年4月
講談社ノベルズ
1300円+税
544頁/新書版並製
ブックデザイン=熊谷博人
カバーデザイン=辰巳四郎
ノベルズ、リベンジ!というわけでもないのだが。ミステリを読むとき参考になるのはもろやんさんのサイトでしょう。私がサイトを始めた頃からの付き合い(といってもたまに掲示板に書き込む程度ですが)で、当時はまだ学生さんだったのがいまでは立派にミステリ評論家である。その彼オススメのこの本を。

メフィスト賞受賞のデビュー作『ハサミ男』についてもそのタイトルしか知らないし、覆面作家であるということも本書の解説を読むまでは知らなかった。そんな状態で読み始めると。
私は10代の頃横溝正史にハマったのだが、ずっと遠ざかっていたあの世界を思い出させるような、小さな村で起こる連続殺人事件。旧家の一族が次々と、古いわらべ歌に関連するがごとく殺され、最初に見つかるのは首なし死体。迷路のような洞窟まであってこれはまさに横溝へのオマージュか。最初の注意書きに
岡山県に獄門島が実在しないように、
岐阜県に暮枝村は実在しない。
とあるし。が解説によると実際は単に横溝だけではなく江戸川乱歩や中井英夫など、この本は探偵小説であると同時に探偵小説批評でもあるらしい。と、ミステリ通が読んだら唸らされるような仕掛けがそこここにあるのだろうが、もちろん私のようなミステリ初心者でも十分に楽しめる。各項目の頭には牛などにまつわる引用があるのだが、それも『ギリシア神話』に『古事記』落語に歌舞伎、「俺ら東京さ行ぐだ」なんて吉幾三の歌まである。それらが決して強引ではなく内容と合っていて、なんともいえない和音を奏でるような感じ。ストーリー的にはなんか気になるところはちらほらあるけれども、文章の和音とクセのある登場人物たちによってテンポ良く進み、細かいことはどうでもよくなってくる。

『ハサミ男』と、本書で出てきた探偵石動のシリーズ、ぜひ読んでみなくては。

about book design...
本文はNKL。2段組。
ノベルズなのにタイトル箔押し!
しかしこのカバーは怖いです、ひねりだしたような金色の牛の造形と真っ赤な肉。巻末の広告を見ると『ハサミ男』も同じシリーズらしい。
首なし死体、などという猟奇的な事件が起こるわりには文章はあまりおどろおどろしい感じがないので楽に読めたのだが、このカバーを見ると深夜などは怖くなる。折しも殺害した母親の首をバッグに入れて持ち歩いた男子生徒の事件などあったときだから余計に。表1を下にしてなるべくカバーを見ないようにしてました。

2007年05月21日(月)14:39 by PINO - Category: bookguide
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