ISBN-4105900218
2000年11月
新潮社
2100円+税
320頁
Diorama by
Kiyoshi Utsunomiya
Photograph by
Takashi Otaka
Design by Shinchosha
Book Design Division
だいぶ前に『
アムステルダム』を読んだきりだったマキューアン。いつの間にかたくさん本が出ていたので、書くのが早い作家なのねと思ったら、『アムステルダム』よりも前に書かれたものが多かった。人気が出たので前の作品も邦訳されるようになったのね。
『アムステルダム』も本書も、始まりが衝撃的だ。複雑な人間関係をもつ女性の葬式から始まる『アムステルダム』、それ以上に強烈なのが本書で、気球から人が落下する事故から始まるのだ。しかしマキューアンのすごいところは、そういった特種な事件から始まるにもかかわらず、それに続く物語が普遍的なテーマを扱っているということ。
主人公はその気球事故で出会った青年に愛を告白される。いや違うな、「あなたはぼくを愛してるんだ」と告白されるのか。青年の行動は奇妙だけれども、決して「そんなのありえない」と思うようなレベルではない。主人公が警察に訴えても相手にされないようなレベルだ。そして読んでいるうちに、これは本当なのか? もしかしておかしいのは主人公の方なのでは?という気分にさえなってくる。
物語にはいろんな愛が出てくる。青年の愛、主人公とパートナーとの愛、事故の被害者と、そのまわりの人々の愛。
結末はやや唐突なような、しかしそれはまとまった時間が取れなくて細切れに読んでいたせいかもしれない。続けて読んでいたらその流れに乗れてもっと自然に受け入れられたのかも。
about book design...
本文は精興社明朝。
『アムステルダム』を読んだ頃は、この本文用紙がすごく新鮮だったけれども、もうだいぶ見慣れてきたかな。国産の紙でも嵩高のものがどんどん出ているし。古くなってくるとだいぶ灼けるらしい、そしてスピンがあるから天アンカットになっているのでどうしても汚れる。新しい時の、手に吸い付いてくるような美しさはなくなってしまうのだな。
ついでにAmazonで文庫の書影を見て驚く。こりゃまったく別の本だな。