『葬儀屋の未亡人』フィリップ・マーゴリン

The Undertaker's Widow by Phillip Margolin/加賀山卓朗=訳

ISBN-4152082577
2000年1月
早川書房
1900円+税
296頁/四六上製丸背
装幀=ハヤカワ・デザイン
10代の頃は大好きだったミステリ、いつの間にかほとんど読まなくなっていた。なので流行りの作家もわからない……がそんなときに重宝するのが真利子さんのサイト。いつも感想は本の一言くらいしか書いていないのだけれども、それでも「なんか面白そう」って思ったものにはハズレがないのだ。この本もタイトルといいカバーといい、書店で見ても絶対に手に取らないタイプの本なのだが、なかなかどうして面白い。
元警官で今は上院議員のエレンの家で強盗殺人事件が。夫(葬儀屋)は強盗に殺され、強盗はエレンに殺される。しかしエレンが逮捕され、担当判事のクィンは奇妙な事件に巻き込まれ、あげくにはエレンを有罪にするように脅され……。ただの強盗殺人かと思った事件の裏には愛憎あり、政敵あり。
怪しい人物は最初から怪しげであったり、はたまたクィン判事は読む者誰もが好感を持ってしまう人物であったり、と結末は予測がつくようなつかないような。しかしそんなことはどうでもいいほどスピーディに息つく間もなく進むストーリー。通常私は仕事の合間に1章ずつ本を読むことが多いのだけれども、これはもう途中で我慢できなくなり一気読みしてしまいました。うん、たまにはこういう本を読むのも楽しいな。

と、読んだらとても面白かったのだけれども、このタイトルじゃあなかなか人は手に取らないのではないか。原題に忠実ではあるんだけど、なんか辛気くさくない? 確かに殺されたエレンの夫は葬儀屋ではあるけれども、ただの葬儀屋ではなくてそこから始まった実業家というか、結構な財産家なのである。エレンも未亡人なんて控えめな言葉が似合わないような美人議員。しかも元警官。最初から最後まで一度もタイトルがしっくりくることがなかった気がするなあ。
そして先ほど「1章ずつ読む」ってことを書いたけど、この本、1章がすごく短いのだ。2段組とはいえ見開きすら続かないようなものも。そこにいちいち「第○章」と入るのは結構うっとうしい。数字だけでいいんじゃない?
というわけで面白いのに見た目とタイトルで損をしている本。もったいない。
あ、でも内容も、訳にちょっと気になるところが。
クィンがシアトル・タコマ空港で捕まえたタクシーは高速道路のカーヴを曲がった判事の目のまえに、ガラスとコンクリートでできた巨大なシアトル市庁舎が姿を現した。
なんか主語と述語がかみ合っていないような。で、クィン=判事なのだけれども、一つの文に両方出てくるところがあちこちある。同じ言葉を繰り返さないようにしているのだろうけど、うまく一つにまとめればもっとすっきりするのになあ。

about book design...
本文はイワタ明朝体オールド。2段組。
しかし翻訳ミステリのカバーってなんでこうなのかしら。電車で読むのが恥ずかしいぞ。しかしこういうのが多いってことは、ミステリ読者はこういうのが好みなの???

2006年10月21日(土)16:59 by PINO - Category: bookguide
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