『ミドルセックス』ジェフリー・ユージェニデス

Middlesex by Jeffrey Eugenides/佐々田雅子=訳

ISBN-4152085541
2004年3月
早川書房
3200円+税
736頁/四六上製丸背
装画=牛尾篤
装幀=馬場崎仁
特に好みのカバーでもなく、中を開ければ狭い行間でびっしり並ぶ文字に聞き慣れないギリシャ人の名前たち。そして何よりもずしりと重い700頁超の厚さ……にもかかわらずこの本を読む気になったのはりつこさんちえぴょんのおかげ。ありがとう。

“ミドルセックス”は主人公一家が住んだ家のある通りの名前でもあるけれども、と同時に主人公自身をも表している。物語の語り手であるカル、もしくはカリーはいわゆる“半陰陽”だからだ。
そんな特殊な設定の人物を主人公とした話……というともっとえげつないものを想像していた。そういったものへの好奇心だけでこれを読むと裏切られることになる。これは主人公の祖父母が若かった頃から始まる、戦争の物語でもあり、移民の物語でもあり、人種、夫婦関係、思春期、などなど決して特殊ではない、普遍的なテーマの物語なのだから。
実際、主人公が自分が普通の女の子ではないことに気付くのは、この長い物語の半ばにきてからだ。そんな人生がひっくり返るような大事なのに、この壮大な物語の中では一つの事件に過ぎないような気までしてしまう。終章での主人公と勇敢に生きてきた祖母との会話を読むとますますその思いが強くなる。

こんなに厚い本だけど一気に読めてしまったのは、登場人物たちがそれぞれとても魅力的に書かれているからだろう。数頁しか出てこない、兄の恋人の女性ですらその人物像をはっきりと思い浮かべられるほどに生き生きと描かれているのだ。
次はどんな人たちを描くのだろうか、と次作がとっても楽しみになった。

about book design...
本文はイワタ明朝体オールド。
とにかく行間が狭い、13級で行19.5歯。もっと空けたいところだけれどもこれ以上ページ数を増やすのも厳しかったのでしょう、今でも十分手に取りにくいほどに厚いものね。いっそ2段組の方が読みやすいと思うのだが、それはそれで拒否反応を示す人もいるので難しい。
一つ贅沢を言えば、この厚さなら絶対にスピンはつけて欲しいなあ。

2006年10月12日(木)22:30 by PINO - Category: bookguide
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