『サウスバウンド』奥田英朗

ISBN-4048736116
2005年6月
角川書店
1700円+税
536頁/四六上製丸背
装画=フジモト・ヒデト
装丁=高柳雅人
(角川書店装幀室)
奥田英朗の本は今までに一冊だけ、『最悪』を読んだことがある。目を離せない展開で、悲哀をおびた登場人物たちが動き回っていて、一息に読んでしまった記憶がある。まだこのサイトを始める前だったのが残念なほどに面白い本だった。
その後『イン・ザ・プール』や『空中ブランコ』ですっかり有名になった著者。それらは未読だけれども、レビューなどを読むとトンデモ精神科医を主人公とした笑える本らしい。あの重みのある犯罪小説を書いていた奥田英朗が? と不思議な感じがしていたのだが……この『サウスバウンド』も破天荒な一家が主人公の本。どこかで著者はふっ切れてしまったらしいぞ。

小学1年生の二郎の視点で書かれたこの本、なんといってもすごいのは自称作家で家でゴロゴロしているお父さん。元過激派で、伝説の闘士なのだ。だから二郎の家はいまだに公安に見張られていたりするのだ。東京・中野に暮らす前半は雑誌に連載されていたもので、沖縄に移住する後半は書き下ろしらしい。
後半の沖縄(それも西表島)の様子はごみごみとした中野と対照的で、何も事件のない島の人々が、それっとばかりに動く様が楽しいのだけれども、私は前半の方が好きだ。はんこ屋の店番をするませた小学生や小学生を脅す中学生、その使いっぱになっている小学生……彼らはおおっ、と思うような行動をするけれども、やっぱり所詮子ども、という感じでガックリきたり、とても生き生きと動いている。まさに東京の、いやディープな中央線沿いの中野の子どもたちなのだ。後半になると子どもたちよりもお父さんを中心とした話になり、しかもお父さんがまた「やりすぎ」といった感じなので、ちょっとついて行けなさを感じてしまうのだけど。
いやでもとても面白かった。「過激派」とか「公安」とか「オルグ」とか、そんな言葉が出てくるだけで普通だったらひいてしまうのだけれども、そんな時代を知らない小学生に語らせることで抵抗感なく読むことができる。しかしこの著者、なんでこんなにいろんなジャンル、そしていろんな個性的なキャラクターを次々生み出せるんでしょうね。他の本もぜひ読まなければ。

about book design...
本文はイワタ明朝体オールド。
タイトルよりも著者名が大きい。それだけ人気作家になったってことなのね。

2006年09月13日(水)06:55 by PINO - Category: bookguide
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2007-03-12

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