『天使のナイフ』薬丸岳

ISBN-4062130556
2005年8月
講談社
1600円+税
352頁/四六上製丸背
装幀=多田和博
表紙・扉オブジェ=郡山広明
久しぶりに日本の作家の本を。
主人公・桧山は妻を殺害されたのだが、中学生の少年3人による犯行だったため罰せられることもなく、つい記者に向かって「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」などと言ってしまう。そして実際、自立支援施設から出てきた少年たちが次々と殺されて行き……。
最近は仕事の合間にちまちまと本を読むことが多いのですが、1時間ほど電車に乗る機会があったのでまとまった時間で読みました。そして続きが気になってしまい、帰宅後一気読み。中だるみすることなく次々展開して行くので、飽きることなく面白く読めます。(以下ネタバレあり、反転して読んでください)ただ、こんなにも少年犯罪の被害者&加害者ばかりが出てくるのはちょっと現実味に欠ける。特にいくら特種な痣があるとはいえ、4歳のときにちらりと見ただけの中学生を10年近く経ってから再会したときに同一人物だとわかるものだろうか? それから加害者たちは、いくら本名などが公開されないとはいえ、近隣の人には当然わかってしまうわけで。なので事件後、遠くに引っ越すと言うイメージがあるのだが、この本の加害者たちも確かに引っ越しはしているが、わりと近いところにいる。もっと全然違う地方などに行きそうな気がするのだが……それとも実際はみなそんなものなのだろうか。桧山は何度も「少年の更生」ということについて自問する。反省して真っ当な人生を送ることを更生と言うけれども、たとえ人の役に立つ職業に就いたとしても、それで遺族に謝罪したことになるのか、と。本のなかの少年たちは様々な「その後」を送る。やはり非行を繰り返す者、努力して真っ当に働く者、そして贖罪について考える者。で、気になったのが、本のなかで本当に更生する者……罪を背負い、謝罪を考える者は友人の誘いを断れなかったり、とっさに刺してしまったり、と巻き込まれるような形で殺人を犯した者たちで、殺人を計画した者や、いたずらしようとして殺してしまった、といった最初から犯罪の意図のあった者たちは更生していない。とすると、根っからの犯罪者は更生できない、ということか。実際にそう思うかどうかは個人のそれぞれだけれども、小説にしてしまうとどうかなあ、と。
もしも何年も前にこの本が書かれていたら、こんな理由で人を殺す少年たちを荒唐無稽なものと思えるだろう。でも今の世の中ではひとつひとつはありそうな事件だ。この本が非現実的だと思えるような世の中になればいいのにね。

about book design...
本文は本蘭明朝。
別丁扉がカバーと関連のない図柄なのでちょっとぎょっとする。見返しにすごい高い紙を使っているのは江戸川乱歩賞ゆえ確実に売れるとのもくろみか。
ところで、作家の顔って気になりますか? 私はできることならあまり知りたくない。なぜならそれは本を読む上で不要な情報だからだ。けれども、文学賞受賞作って著者写真がデカデカと載せられることが多い。この本も別丁扉の次に1頁大で。

2006年09月07日(木)12:36 by PINO - Category: bookguide
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