ISBN-478972512X
2005年9月
ソニー・マガジンズ
1700円+税
208頁/四六上製角背
ブックデザイン
=鈴木成一デザイン室
朝日新聞の書評に取り上げられていた本。
スペインのアイニェーリェ村は実在した村だそうだ。1970年に完全に廃村になったようだが、これはその村の最後のひとりが語る物語。フィクションだけれども、最初に書いてある通り
(前略)作者自身は気づいていないが、彼らが実在の人物である可能性は大いにある。
村人が次々と出て行き、子どもたちも行く方知らずになったり、死んだり、そしてやはり村を捨てて出て行ったり。そうしてたったひとりになり、近くの村の人々からも狂人のように見られる彼を、読みながらやはり気味が悪いとも思う。けれども読み進めるにつれ、消えてなくなる村には彼のような、最後の人物は必要なのではないか、といったような気分になり、彼と一緒に黄色くなっていく誰もいない町を歩いているような気持になる。台所に座って、彼が呼吸する音を聞いているような気持になる。だからこそ、最後の一行がしみじみと心にしみる。
最後にはとても丁寧な訳者解説。小さな書店のおやじさんとの出会いは、まるでこれもひとつの小説であるかのようだ。
about book design...
小さめの版面(37字×16行)で周りが空いているせいで雰囲気がある。そして本文の組がとても変わっている。段落が変わるごとに1行空き。しかも段落始めは通常1字下げだけれども、この本では1字上げ、つまり2行目以降が下がっている状態。男性がぽつぽつと思い出すままに語っている感じがよく出ている。これは原書もそうなのかしら、それとも日本語版だけ?(だとしたら提案したデザイナーはもちろんOKした編集者もすごい)。これ以上はない、ってくらいに内容に合った本文組。そしてこの組みだからこそ、最後の一行が立っている。
本文は精興社明朝(NSLM)。カバーでも使われているけど精興社書体は門外不出のはず。ってことはカバーも指定でやっているのかな。確かに著者紹介のところのツメ具合が指定っぽいけど。
黄色い本、にしちゃわないところがつくづくさすがだ。ちらりとのぞく花布だけ黄色。