上:ISBN4-06-273447-8
下:ISBN4-06-273448-6
2002年6月
講談社文庫
上:667円+税
下:619円+税
上:456頁/下:352頁
撮影=藤塚光政
オブジェ=鹿目尚志
カバーデザイン=多田和博
貧乏学生時代、そうそう本を買うお金はなかった。そして大学の図書館には小説の類いはない。エンターテインメント小説が読みたくなったらどうするか。答えは新聞の連載小説だ。夏休みなどで読めなかった分は図書館に行ってまで読んでいた。
大人になってからはそうまでして読むことはなくなった。読みはじめて面白いと思っても、たいていゴールデンウィークに新聞を止めて途切れてしまい、どうせ本になるだろうし、とそのままにすることがほとんどで。しかし今、また図書館に行ってまで読んでいるものが。それが朝日で連載中の『メタボラ』、桐野夏生の作品である。
著者の本はまだ1冊しかきちんと読んでいない。『
柔らかな頬』には一気に読ませる面白さはあったけれども、曖昧なラストに、そしてなによりもこの本を読んだのが臨月のときだったので、母親の不倫中に子どもがいなくなるという話はあまり後味がよくなかった。今読んだらまた違う感想を持ったかもしれないけれども、あえてもう一度読もうという気にもならない。それよりも当時は長い予約待ちだったのに、今では図書館の棚に複数冊並んでいる『OUT』の方を。
最近の読書はもっぱら仕事の合間に1章ずつ、という感じなのだが、これは上巻の半ばからもう一息に読んでしまった。この本も一気に読ませる面白さを持っている。けれども……やはり読後感は悪い。まずは死体を解体する作業の描写。しかしそもそも普通の主婦が、こんな風に完璧に処理できるものだろうか、と疑問に思いながらもその吐き気のする描写を読む。そしてその普通の主婦が、こんなにもタフに立ち回り、(以下ネタバレあり、反転して読んでください)
あのような死闘の末、海外旅行に行ったこともなく、つてがあるわけでもないのに大金を持って高飛びなんてできるのだろうか、途中からはもうこれは“普通の主婦”の話ではないのだ。いや別に現実離れしていたって全然構わないんだけれども、なんかもっと日常に潜む悪への階段、みたいなものを想像していたからちょっと予想外ではあった。
で、これは映画化もされたわけだが、確かにそれっぽい。前に読んだ唯川恵の『
刹那に似てせつなく』が同じように女性の犯罪ものでもサスペンスドラマにしかならないだろうなあ、という感じだったのに対して、こちらは十分映画である。ただあの解体シーンはどうなっているんだろうね。もちろんそのまま見せるわけにもいかず、でもあの生臭くまとわりつく感じが出ないと伝わらないと思うのだが。
さて今まで読んだ桐野夏生の本は2冊とも後味の悪いものだったのだが。それがたまたまなのか、それとも彼女の作風なのかは『メタボラ』が終わるときにわかるかしら。