ISBN-4309204015
2004年6月
河出書房新社
1700円+税
352頁/四六上製丸背
装幀=水木奏
「ベル・ジャー」とは理科実験などで使う、ベル型のガラスの覆いのこと。
これも河出の「モダン&クラシックシリーズ」。刊行年が新しいので最近の作家かと思いきや、著者は私が生まれるよりも前に死んでいた、オーブンに頭を突っ込んで自殺して。
彼女が自殺を図ったのはそれが初めてではない。10代で短篇を発表し、詩や短篇で数々の賞を受賞、名門大学に進み、成績も優秀、雑誌のゲストエディターに選ばれ
……と輝かしい経歴の持ち主だったのに、睡眠薬自殺を図り、精神病院へ。この本はその頃の体験について書いた自伝であるが、登場人物に気遣って最初、別名で発表したそうだ。しかもアメリカでは出さないという条件で。しかし彼女の死後、シルヴィア・プラスの名でも、そしてアメリカでも発行されることとなるのだが。ちなみに日本でも1974年に『自殺志願』の邦題で出されたらしい……うん、『ベル・ジャー』のままの方がいいな。
自殺未遂の末精神病院で療養する話、というと陰鬱なものを想像するが、主人公は普通の10代の女の子であった。いや、普通よりはずっと優秀だけれども、でもものすごく特別ってわけじゃない。
読んでいる間中とある友人のことを思い出していた。彼女が実際に自殺を図ったことがあるかどうかは知らないが、死ぬことはよく口にしていた。そして彼女もとっても優秀で、よく文章を書いていて、しかし書けなくもなっていて。そして読めば読むほど、彼女はもしかして『自殺志願』を読んでいてそれを真似していたのではないかと思うくらい似ている。
そんな彼女と私が決定的に何かが違っていたわけではない。針があっちに振れ、こっちに振れ、と少しずつ違っていただけなのにいつの間にか遠くにいるような。だからこの本と私との間に数十年の開きがあったとしても、10代の終わりの、こんな風な危なっかしさはものすごくよくわかる。おそらくその年代の女の子の普遍的なテーマなのだろう。それで今も読み継がれているのだろうな。実際読みはじめて、そんな前の作品だとは思わなかったもの。さすがに精神病院での治療法には驚かされたけれど、前時代的で。
ところで訳者あとがきの最後に、訳者が故須賀敦子さんに言われた言葉が載っている。「小説を書く前に、一冊でいいから名作を翻訳しなさい」と。この名作を雰囲気たっぷりに訳した彼女はきっといい小説を書くのだろうな。