ISBN-456004693X
2000年6月
白水社
2200円+税
280頁/四六上製丸背
装丁=伊勢功治
ISBN-4560071462
uブックス
この作品について知ったのは本よりも映画が先だった。フェルメールの世界を描いた作品……見たいような見たくないような気がした。
最近はとんと行く機会がなくなったが、10代の頃、美術館がそりゃあもう大好きだった。一通り見た後に一番気に入った絵の前に行く。開館から閉館までずっといたこともある。私が通った中学では3年の時に自由研究なるものを提出して、それは卒論並に長いスパンで書き、製本して抄録もつけるというようなものなのだが、その時に選んだテーマはピカソだった。
絵を見る面白さの一つは、見る人が勝手に自分の物語を想像できることだ。絵の人物が誰なのか、どんな状況なのかを想像するのは楽しい。まったく知識のない状態で見ても楽しいし、その作家について調べると、ははあ、この女たちは新旧の愛人だな、なんてことがわかってまた面白い。そしてそれは正解である必要はないのだ、見る人それぞれに都合のいい物語であればいいのだから。
この作品に手を出すのをためらったのはそのせいだ。見ているとまわりの音が聞こえなくなるようなフェルメールの絵。それを見て作家の考えた物語が私が想像するものとかけ離れたものだとしたら自分の記憶の中の絵たちが汚されるような気がするかもしれない。けれども本を読んだ
すみさん&にえさんも映画を観た
EMYさんも褒めていて、恐れていたような画家とモデルの下世話な話ではないことがわかったのでまずは本を読んでみた。
「真珠の耳飾りの少女」は別名「青いターバンの少女」としても知られている。実際には誰だかわかっていないこの絵のモデルに著者はフリートという少女を設定した。そのフリートが一人称で語ることで本は進んで行く。タイル職人だった父親が事故で失明したためにフリートは16歳でフェルメール家の女中となる。フリートは架空の人物だが、フェルメール家の家族構成や名前、家の間取、義母についている年嵩の女中などは現実と同じだ。そして読んでいるうちにフリートも実在したような気になってきて、そして絵がフリート以外には見えなくなってくる。そして単に美しいだけの世界ではなくて、さもしさや不幸に直結する貧しさを見せつけるものでもある。
ストーリー以外の楽しみは、読み進めるうちにいろんな絵が出てくるのだけれども、「あ、これはフェルメールのあの作品のことだな」と気付くこと。絵に詳しくない方は
ここ(フェルメールの手紙)に全作品の写真が載っているので眺めながら読むといいかも。ただマダムタッソー人形館のフェルメール像の写真も載っているのだけれど、これは見ない方がいいかも?
絵の世界から外れることもなく、しかしただの絵物語ではなく、引き込まれ、読みふけってしまうような本だった。そして本を読むことでますます絵が魅力的になるような。
EMYさんによると映画の方もあの絵の世界が忠実に再現されたような映像らしい。原作にも象徴的に出てくる広場の星形のタイルなどとっても映画向きだもの。そしてフリート役は
プロが選らんだ最もスッピンの美しいセレブスカーレット・ヨハンソンで、大きな目といいまさにぴったりではないか。どうやら映画の結末は本と違うらしいのだがAmazonなどのレビューを読むと映画の方がより恋愛寄りになっているような気がするんだけど、どうなんでしょう。ともあれ映画も観たいなあ。