ISBN-4062102854
2000年12月
講談社
1700円+税
392頁/四六上製丸背
装幀=重原隆
あまりテレビを見ない私は、ずいぶん前に野沢尚の名前を知らないまま『恋愛時代』を読んだ。二分冊の長い小説だったけれども、登場人物がとても生き生きとしていて面白く、一気に読んでしまった。後になって著者が人気脚本家だと知り、きっと登場人物たちをイメージして頭の中で喋らせながら書くからああいう文章が書けるのだろうなあ、と勝手に納得。
そして数年後、彼が手がけたドラマ『眠れる森』を見て。『恋愛時代』の軽快さとはうってかわって殺人事件が絡む重い話だったので驚いた。そしてこの本もそれと同様に、一家惨殺事件の生き残りの少女が主役となる物語。
一気に読めてしまう、という点では面白かったのかもしれない。ただ小説としては『恋愛時代』の方がはるかに上の気がする。この本はなんかとてもドラマっぽいのだ(実際映像化もされている)。別にドラマのような小説が悪いというわけではないし、むしろそういったものは売れるのだろう。けれどもなんか小説として読むよりも映像としてみた方がきっと面白いんじゃないかなあ、と思ってしまうのだ。優れた脚本家が優れた小説かであるというわけではない、ということか。もしかするとその辺りも著者の苦悩の種だったのだろうか。読者や視聴者の望みに応えるだけの能力があったからこそ、かえって自分を見失っていったのかもしれないなあ、なんて勝手なことを思いつつ、著者のご冥福をお祈りする。