ISBN-4167218534
1998年12月
文春文庫
752円+税
480頁/文庫
装画=大鹿智子
デザイン=大久保明子
きっかけはりつこさん(
MY FAVORITE〜私の好きなもの〜)が
Book Batonで「特別な思い入れのある本」として選んでいたので、これは絶対に読まなければ、と思ったのだ。昨年末から読みはじめたのだけれども、その間にりつこさんは重大な決断をして、新たな生活に踏み出した。うん、ナイスなタイミング。今ならりつこさんもゆっくりホームシックレストランで食事ができるだろうから。
物語はタル家の母親パールが死の床につくところから始まる。バラバラだった家族がこれでひとつになるのかしら、それとも骨肉の争いが始まるのかしら……なんて思うも、そんな陳腐な物語ではなかった。
この話には筋のようなものはない。子どもたちが小さい時から、母親のパールが亡くなるまでの一家の物語。いろんな事件は起きるけれども、それらはどれもものすごく特別なものでもない。けれどこの中には親子の問題、夫婦の問題、兄弟妹の問題がリアルに描かれているのだ。著者がこの本を書いた時は41歳。ああ、なのにどうしていろんな年齢におけるいろんな家族関係に絡む気持をこんなにもリアルに書けるのだろうか、と思ってしまうほどに。
どんな家族だって多かれ少なかれ問題を抱えている。本の中で主人公たちが羨ましく思うような家庭であったとしても。他人から見たら些細なくだらないものでも本人たちにとっては重大なのだ。そして本の中にそういった問題と重なる部分が、人によって場所は違うだろうけれども必ずあって、だから共感できるのかもしれない。
物語はパールの葬式の日で終わってしまう。登場人物たちは決してみんな“いい奴”なんかではないのだが、しかしそれがかえって身近に感じられるせいか「このあとも仲良くしていけるだろうか」とか「今度は離婚しないだろうなあ」とか余計な心配をしたくなってしまう。いやでもきっと大丈夫なのだろう、ホームシック・レストランで食事ができたのだから。