『その名にちなんで』ジュンパ・ラヒリ

The Namesake by Jhumpa Lahiri/小川高義=訳

ISBN-4105900404
2004年7月
新潮社クレスト・ブックス
2200円+税
352頁/四六地券
Photograph by
Art Wolfe /
Getty Images
Design by
Shinchosha Book
Design Division
このサイトの更新頻度を見てもわかることだが、4年ちょっと前、人生でもっとも暇と言えるのではなかろうか、という時期が訪れた。で、たくさん本を読んだ。通っていた産院は予約のできないところで、しかもいつも土曜日だからとても混んでいた。1時間や2時間は当たり前、3時間待ったこともある。いつも本を持って行ったのだが途中からは2冊持って行くようにした。そこに最後に持って行った本が著者のデビュー作『停電の夜に』だ。短編を、ひとつ読んではほおっと思いをはせるようにしてゆっくりゆっくり読んだ。あとで思えばもっと一気に読んでしまえばよかったのかもしれない。入院の日もその本を持って行った。陣痛の合間に読んだりしたのだが、だんだんそうもいかなくなる。そもそも落ち着いた気分で読みたい本なのだ。そして分娩室から戻ったあとも枕元にあったのだけれども「産後に本を読んではいけない」と母に持ち去られてしまい、結局読み終わることはなかった。
その後も何度かまた読もうと思ったのに、結局読まないまま先に2作目である本書を読むこととなった。物語は、主人公ゴーゴリが生まれる日から始まる。4年ぶりの2作目が4年前の自分と繋がっているようで、この人の作品をずっと追いかけて行こう、という気分になる。

アメリカ生まれのベンガル人、しかしロシアの作家の名前を持つゴーゴリはその名前を嫌い、インドの風習を嫌う。そういった特異な設定であるのにすんなりと受け止められるのは、それが親の世代と若い世代という普遍的なものとして書かれているからだ。無駄な飾りのない短い文章は、そのまわりにふわりと空気をまとっているようで、言葉以上のものが伝わって来る。
これを読んだのが今であって本当によかったと思う。ガールフレンドの家に行って、そのくだけた両親との暮らしをかっこいいと思い(しかしそんな親がかりな甘えた生活はかっこ悪いのだが)、自分の親を恥ずかしく思う気持ち。ゴーゴリの妻が、友人宅から帰ると自分たちの生活が追いついていないことを実感させられていらだつ気持ち。そういった気持ちが今だからどれもとてもよくわかる。著者とは同世代なのだが、何年かして彼女の新作が出たとき、また同じように歳をとっていることができるだろうか。

その名にちなんだ、ゴーゴリの『外套』も読んでみなければ。

※このアイテムは2005年11月01日11:31:11に保存されたものを再編集しています 2005年11月04日(金)10:53 by PINO - Category: bookguide
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