ISBN-4105217054
1999年12月
新潮社
2400円+税
352頁/四六上製丸背
装画=塩田雅紀
装幀=新潮社装幀室
ISBN-4102451072
2002年11月
新潮文庫
読みたいと思った本のタイトルなどは次々メモにとっておく。当然読む方が追いつかないので、実際に読む頃には数ヶ月とか数年とか経っていてきっかけがなんだったかも思い出せないことが多い。まあでも薦められてすぐに読むと相手の感想に影響されたり、はたまたつまらなかった場合など書きにくかったりするからそれもいいのかもしれないが。
さてこの本を読み始めたきっかけは……またも
EMYさんであったよ、今度ばかりは違うと思ったのに。いや、なんかいつもの彼女の読書傾向とは違う気がして。3冊連続、まるでストーカーのようだ、す、すみません。
で、ポール・オースター。ずっと『ムーン・パレス』や『偶然の音楽』が気になっていたのに、初めて読んだ作品となった本書はあとがきやネットの書評によると「それまでのオースター作品とは違っている」「オースターらしくない」作品らしい。なんでよりによって最初にそれを。
読み始めは冷たい印象の語り口と、なかなか進まなそうな物語、とあまり気乗りがしない感じだったが、しばらく読むと、それぞれにとても個性的であるがしっかり描写されているので現実味のある登場人物たちの行動にすっかり引き込まれる。冒頭の謝辞に
事実と虚構を混ぜ合わせることを許可してくれたソフィ・カルに感謝する。著者
とあって、なぜソフィ・カルが?と疑問に思っていたのだが、女性アーティスト、マリア・ターナーなる人物が出てきたところであっと思う。彼女の行動はまさにソフィ・カルなのだ。あとがきにも出てくるが、本書は“事実”とオースターの創作である“虚構”とでできているが、発売当時からずっと読みたかった(しかし最寄りの図書館にはないのだ)カルの『
本当の話』は“事実”のみでできている。ますます読みたくなってきた。
EMYさんも書かれている通り、この物語の中にはいくつもの“偶然”が出てくる。うん、決定的な大きなものは2つだけれども、それ以外にもいろいろあるよね。これがもっと下手な小説だったら気にならないのだろうが、なまじ緻密に描写された本であるから余計に、途端につまらないステージに降ろされてしまうような感じがしてもったいない。
あと、面白くはあったのだがいまひとつ消化不良なのは、私がアメリカという国になんの思い入れもないからかもしれないなあ(EMYさんもか)。自由の女神が象徴するものは言葉ではわかったとしてもやはり実感できないし、そもそもその複製がアメリカ全土にうじゃうじゃあるなんてことも知らなかった。だからサックスなる強くもあり弱くもあり魅力的であった人物が“自由の怪人”になったあたりですっかり惹かれなくなってしまったのだ。そして魅力を失ってからの結末は、結局何が正しいんだ?と思うような不完全燃焼の気分だったり。
と言いつつも、一気に読ませるような面白さではあったのだ。そしてその力量に唸らされるような作家なのである。他の本もやはり読んでみよう……すぐにじゃないけど。