ISBN-4480831371
1993年4月
筑摩書房
1980円
198頁/四六上製丸背
装画=藤井明子
『侍女の物語』は衝撃的だった。この著者の本をもっと読まなければ、と思うほどに。
本書は5つの物語からなる短編集。読み始めるもやはり短編、『侍女の物語』ほどの緊迫感や世界観はないなあと思うが、2つめの短編、表題作でもある『青ひげの卵』を読むとうならされる。『侍女の物語』は現実ではない近未来世界、こちらは医者と編集者のごく普通の夫婦なのだけれども、読み手にとってはどちらの世界も同様にリアルに感じられるのだ。あんなに息をひそめるように読んだのに対して、こちらでは余裕を持って背もたれにもたれながら読むことができる。けれども……。
1つの長編と5つの短編を読んだだけで決めることはできないかもしれないが、彼女の作品はいつも表裏一体だ。そして一方はやや狂気をおびている。『侍女の物語』の二通りにもとれる終わり方、違うサイドで生きる女性たち、そもそもあの世界自体が狂っている。そしてそれらはどちら側にも行き得るのだ。本書でも、見下ろしているつもりが見下ろされているようでもあり、狂っているようでもあり……しかしそれらは決して“どんでん返し”にはならない。裏表は入れ替わるのではなくて共存しているのだから。
もうひとつ。どれも明らかに“女の書いた”物語なのだ。主人公が女だから、というだけではない。女ならではの冷たい視線と暖かい視線が入り交じっている。比較するのもおこがましいが、この直前に読んだ
『ハワイッサー』を「女性ならでは」「主婦ならでは」などと評した文章を見かけるけれども、あれなら想像力があれば男にも書ける。でもアトウッドの作品は違う。主人公に感情移入するというわけではなく(だって感情移入できないようなキャラクターも多いのだ)ただ読んでいるうちにいつの間にか同じ高さの目線になっている、そんな感じだ。
もっともっとこの人の本が読みたい……が、絶版だったり、図書館でも地下書庫にしまわれていたりするのはなぜ?
T(Pulp Literature)さん:はじめまして。
『青ひげの卵』は女性っぽい不思議な印象の短編集だなあという感想を持ちました。
即物的な文章が印象的で、淡いというか希薄というか、そういう言葉にしづらい雰囲気だった記憶があります。
あと、『侍女の物語』を高く評価されてるようなので、ちょっと読んでみたいなと思ってます。