ISBN4-06-210986-7
2002年1月
講談社
2300円+税
320頁/A5上製丸背
装幀装画=金井久美子
題字=鈴木文枝
金井美恵子の本を読むのは久しぶりで。前に読んだ『
小春日和』は妙に親しみをおぼえる、いわゆる“等身大”な本だったなあ、などと思いながら本書を読み始める。……が、どうも勝手が違う。46字×17行×2(見開き)の中に一度も改行のないような、いや、場合によっては句点すらないような長い文章がずらずらと並ぶ。そんな文章だから読んでいるうちに主語はわからなくなるし、はてこれは誰が誰のことについて言っているのだ?とまた読み返したりすることもしばしば。仕事の合間の息抜きにと思ったのに、これはとんでもない本を読み始めてしまったなあ、と思ってしまうのだが、読んでいるうちにだんだん人間関係などもわかってくるとそれほど大変でもない。
主人公で語り手の「私」は小学生で、とある事情から弟と一緒に知人の家に預けられるのだが、その家は美容院を営んでいるから、そもそもいろんなうわさ話が飛び交うような職業であるし、またその家は姉妹に加えて見習い美容師もいてまさに女だらけの場所なのだ。小学生にとって耳に入ってくるうわさ話はこんな風に混沌としているのだろうし、そもそも子どもの記憶はいろんなことが入り交じっていて、それらが突然思い出されたり、はたまた読んでいる『秘密の花園』の話まで混じり合ってますますわかりにくくなっているのだが、これはまさに小学生の頭の中かもしれないなあと思うとやはり金井美重子はうまいのかもしれない。
そしてつい先ほど読み終わって、といっても読み始めたのはもう半月も前なのだけれども、すぐにこうして文章を書いていると、すっかり改行の少ない長い文章になってしまうから不思議だ。
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装幀は著者の姉の金井久美子で、カバーと見返しの絵は、その姉は物語の舞台である50年代前半にはちょうど主人公と同じ小学生だったわけだが、その頃に描いた絵なんだそうだ。で、カバーはともかくとして見返しの絵が素晴らしくうまい。鉛筆で描かれた4人の女性なのだが、子どもの絵ってえてしてみんな同じ顔になりがちなんだけれども、それぞれがしっかり別の人として描き分けられている。
ところで。私はあまりA5の版型って好きではないのだけれど。図版がたくさん出てくるような本なら大きい方がよく見えるってのもあるが、文字だけの小説ならば絶対に四六の方がいいのに。