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ISBN-4087746836
2004年1月
集英社
1200円+税
128頁/四六上製
装丁・装画=葛西薫
仕事で本は増える一方だからほとんど買わない、なので読みたい本は図書館頼みなのだけれども、いつ手元に届くかわからないベストセラーは予約する気になれずマイナーな本ばかり読んでいる。芥川賞受賞作の本書が読めたのはK嬢のおかげ、ありがとう。
さて文学賞の中で最も有名なのはこの芥川賞と直木賞なのだけれども、どうも私はこれらの賞に懐疑的だ。なぜなら選者が作家だから。評論家ではなく同業者である作家が選ぶのだったら本というものに目を向けさせつつかつ自分たちの地位を危うくしないものを選ぶのではないか?
例えば『鉄道員(ぽっぽや)』。あれを読んで涙したのは普段本を読まない人々ではないか。あれは短編集ではなくネタ帳だ。浅田次郎の力をもってしたならそれぞれの短編を膨らまして一つ一つを長編にすることだって可能なような。でもそれじゃあ読者の裾野は広がらない、パッと読めてパッと泣けるようなものを受け入れる人は多いけれどもそれは文学的にはどうなのか。
今回の金原ひとみ&綿矢りさ、というビジュアル的にも目をひく二人の受賞は最近のこれらの賞の中でも最も話題になったのではないか。でもそれに本当に中身が伴っているのかはなんとなくうさんくさかった。そして読んでみたらやっぱり……。
物語は「スプリットタン」という耳慣れない言葉から始まる。舌にピアスをして、それをだんだん大きくし、最終的には先端を切って二つに分けるというもの。
他にも耳に1cmくらいのピアスの穴をあけたり、入れ墨をしたり痛そうなものが次々出てくる。セックスすら乱暴な、痛みを伴うカタチだけれども私が本書を面白いと思えないのはそういったものに対する嫌悪感からではない。例えば団鬼六のSM小説は、同じようなことの繰り返しで読んで面白いとは思わないけれども、それでもゴクリと唾を飲み込むような引き込まれる描写がある。あるいは私が評価する数少ない直木賞受賞作『赤目四十八瀧心中未遂』に描かれる世界はドロドロと臭いがしそうなものだけれども、それから目をそらすことを許さないような迫力がある。でも本書ではただ刺激的でマニアックな言葉がずらずらと並ぶだけで、見入ってしまうようなすごさも目をそらせないような怖さもないのだ。
これが物語として成り立っているのはその奇妙な設定のせいでのみだと思う。著者の次の作品を読んではいないけれども、このようなものばかり書いていたらいずれネタ切れで終わるだろう。もっと普通の日常を舞台にしたものが書けたら、そのときには彼女を評価したい。
about bookdesign...
この本が文学然としていられるのは勿論「芥川賞」のせいもあるけれども装幀の力も大きいと思う。CDジャケット風に写真を使ってタイトル書体はゴシックMB101で……という風にやったら、いわゆる「Jブンガク」の括りに入れられたのではないか。
舌だけ箔押しだったり、地色は紙色ではなく1色刷っていたり……とみかけによらずお金のかかった装幀なのである。