『南国に日は落ちて』 マヌエル・プイグ

Cae La Noche Tropical by Manuel PUIG 野谷文昭=訳

ISBN-4087732584

1996年/集英社
2330円+税
256頁
装幀:菊地信義
装画:羽山惠
大好きなプイグが50代で亡くなったのはショックだった。本書は遺作。彼の本で最初に読んだのは『蜘蛛女のキス』。暗い刑務所の中の二人の男。ひとりはホモでひとりはノーマル。そういった状況について何の説明もないまま、ほとんど会話だけで物語は進んでいく。無駄がなくてゾクゾクさせられて……一気に読んでしまう。映画や舞台にもなっているようで、それらは未見なのですが、でも本のように、状況を理解したときにアッと思う感じは出ないでしょうね。
赤い唇』では物語は手紙によって進んでいく。この作家はそういった手法が好きなようで、本書も主に会話だけで進む物語。
ストーリー自体はそんなに新しいものではありません。老姉妹がいて、それぞれの子どもたちの話や隣人の噂話、そして貧しい若者を助けようとして逆に騙されてしまう。それが引き込まれるように読んでしまうのは、この姉妹の会話だけで進んでいくからでしょうか。二人は年をとっているのに、娘のようにかわいらしいところもあって、噂話が大好き。それは主に隣人の女性の男性関係についてなのだけれど。妹が家を離れてからは会話のかわりに手紙によって話が進み、突然告訴状や調書が混ざる。そういった過不足のない文章から、読者は好きなように想像して読み進めることができる。『蜘蛛女のキス』もそうなのだけれど、最初よくわからなかった人間関係や状況が、手探りのように読んでいくとだんだんわかってくる、この面白さ。しかしもっと有名であってしかるべき作家なのに、この値段が災いしているんでしょうか。

1999年11月14日(日)14:09 by PINO - Category: latinamerica
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