「ビューティフル・サンデイ」
サードステージshowcaseシリーズ

東京公演=2000年2月9日〜16日/六本木・俳優座劇場
大阪公演=2000年2月19日〜20日/上本町・近鉄小劇場
観劇日=2000年2月12日18:00開演
CAST=長野里美・小須田康人・堺雅人
作=中谷まゆみ/演出=板垣恭一
「BookGuide」の『ドン・キホーテのピアス』のところにも書きましたが、私のサードステージ観劇歴はあまり長くありません。「リレイヤーIII」から。というのも、それまで演劇というものに対して、ちょっとした偏見があったから。
高校の同級生のS嬢とは、別段親しいわけではなかったのですが、同じ私鉄で通学していて、電車の中で会うと話す程度の仲。色白で、小柄で、ほっぺが赤くてふっくらしていて、かわいくておとなしい文学少女でありました。そんな彼女がある日電車の中で「私、今これにはまっているの」と取りだしたのは演劇のチラシ。「ブリキの自発団」なるアヤシイ劇団名といかにもアンダーグラウンドっぽいビジュアル。おとなしいS嬢が突然熱く語り始めたものだから、私はすっかりひいてしまいました。
うむむ、演劇とはそんなに人を変えてしまうのか(大げさ)と思うことしきり、今度はテレビの深夜番組を見ていたら、「珍しいキノコ舞踊団(舞踏団だったかもしれん、詳しい方フォローを)」なる劇団が出ていた。またしてもあやしげな劇団名。おまけに彼女たちはとても楽しそうに踊っているのだけれど、観ているこちらは全然楽しくない。当時ちょっとした小劇団ブームで、他にもいろいろ出ていたのですが、どれもこれも本人たちだけが楽しそうに見えて、観ているほうはどんどんひいてしまう。でもそれにS嬢のようなおとなしい人がはまってしまうわけだから……まるでカルト(当時そんな言葉はなかったかもしれないけど)のようだ!と思い込んでしまったのでした(両劇団ファンの方お許しを)。だから、仕事でかかわることがなかったら、演劇なんて一生観に行かなかったかもしれません。
そんなこんなでサードステージの公演を観るのはもう何作目かなあ。第三舞台、鴻上ネットワーク、そしてこのshowcaseシリーズといろいろ観てきました。showcaseシリーズは毎回脚本化が変わるもので、観るのは今回が2作目。前回観た「パ・ド・ドゥ」は正直あまり好きではなかった。出演者は二人だけで、携帯電話などをうまく使って他の人物を想像させるんだけど、電話の会話だけで十分相手が想像できているのに、わざわざ後から説明したりしちゃうくどさが苦手だった。だからもうshowcaseシリーズはいいや、と思っていたのですが、今回のこの豪華キャスト。無理を言って、チケットを取っていただいたのでありました。
入り口入るとなんか並んでいる。ビデオを買うのか、すごい売れ行きだ……と思ったらなんと売り子が鴻上氏。これはいい作戦かもしれん。
幕が開くと、サードステージには珍しく、やけに具体的なセット。マンションの一室がそのままある感じで、なんか「8時だよ全員集合」のドリフのコントみたいだ(古い)。もそもそと起き出してきた小須田氏は相変わらずで、オッサンパジャマがよく似合う。次に出てきた下着姿の長野氏は……すごい老けたぞ!いやはや数年見ない間に随分と老けてしまったのですが、あのかわいい声は健在。見かけは老けても、雰囲気は相変わらずかわいい。
ストーリーを説明してしまうと、ビデオで観ようという方の楽しみを奪ってしまうからやめておくけれど、最近観たサードステージの中で一番でした。というのも最近の公演は鴻上ネットワークなど若手の役者さんを中心としたものが多くて、若手といっても、アイドルテレビドラマに出ている連中に比べれば格段にうまいのだけれどやはりなんか力が入り過ぎな感じがして、観ていると途中で疲れてしまう。でも今回の役者さんたちはさすがにうまくて、まるで実際にそういう人がいるかのようで(役もそれぞれのキャクターにぴったりだったし)とても自然に感情移入できたのでした。連れのN嬢など大泣き。普段泣くキャラクターじゃないからビックリした。結局演劇って、脚本家よりも演出家よりも、役者の力が大きいんじゃないかしら。テレビみたいにカメラワークでごまかせないし。
勿論脚本もよかったです。皆がそれぞれ悩みを抱えている。で悩みなんていうものはとっても主観的なものだから、誰かの悩みが他の誰かの悩みよりも大したことじゃない、なんてことは決してない、というのは私自身も常々思っていることだからとても共感できた。子どもの頃先生に「人の痛みのわかる人になりなさい」なんて言われたけれど、私はそんなことできないと思う。病気の時に医者に行ってどこがどう痛いのかを説明するのだって結構大変でしょう。体の痛みを専門家である医者に伝えるのだってままならないのだから、心の痛みなんて人に伝わるわけがない。だからずっと思ってきたのは、人には皆痛いところがあるっていうこと。どこがどう痛いのかわからなくても、痛みを持っていることだけには気付いてあげたい。
と、演劇の話からちょっとずれてしまったけれど、この芝居の登場人物たちは皆それぞれ悩んでいてそれらの悩みのうちのどれかは観る人の痛みにも触れてくる。痛いところに触られるのは一瞬ちょっと辛いのだけれど、でも芝居と一緒に治っていける気がします。
終わってしまった公演ですが、そのうちビデオになるんじゃないかな。showcaseシリーズは「パ・ド・ドゥ」だけすでにビデオが出ています。その売れ行きによって他の作品もビデオにするかどうか決める、みたいなことを言っていましたが、今回の公演はものすごい人気のようでしたから大丈夫でしょう。なにせ連日満席、通路は勿論、舞台の袖からも観ている人がいて、それでも入りきれずに帰った人も大勢いるとか。

2000年02月27日(日)11:13 by PINO - Category: stage
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1999-12-14

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