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『新耳袋 現代百物語第二夜』 木原浩勝+中山市朗

KIHARA Hirokatsu, NAKAYAMA Ichiro

ISBN-4889915494

1998年
メディアファクトリー
1200円+税
292頁
造本:祖父江慎(コズフィッシュ)
書店にいる私はかなり怪しい。いわゆる「立ち読み」はあまりしない。本を読み出したら最後まで読みたくなる方なので、立ち読みのまま最後まで読んでしまいかねないから。本を手にとったらまずカバーをはずして表紙を見る。書店で平積みの本の上を向いているところが表紙、と思っている方多いでしょう? それは間違い。一番上に出ているのは「カバー」でそれをはずしたのが「表紙」。本を買ってから一度もカバーをはずしたことない、なんて方も結構多いようですが、この表紙がなかなか面白いのですよ。カバーはやはり本の売れ行きがかかっていますから、編集者にいろいろ注文もつけられますが、表紙に関してはもう何でもあり。何もいわれないのをいいことに手を抜きまくるデザイナーもいますが、それって勿体ない。表紙を作る時って私には結構楽しい時間なのだけれど。

それはともかく、表紙を見たあとは本文をパラパラとめくり、奥付や目次を見てデザイナーのクレジットを探す。そんな行動を、ジャンルを問わずあちこちでくり返しているわけだから、明らかに読みたい本を探している人には見えないでしょう。でも書店の方、ご心配なく。職業柄本はていねいに扱いますから決して折ったり汚したりはしませんよ。ちなみに、いいなと思う本はほとんどが祖父江慎か鈴木成一の手によるもの。この二人の本に対する考え方は対称的なんじゃないかと思う。そう思う理由を書くと長くなるのでやめておくけれど、クレジットをそれぞれ「造本」「ブックデザイン」としているあたりにもよくあらわれているのでは。

この『新耳袋』、10巻まで出るらしいのだが、私が書店で見つけた時には1、2巻が並べて平積みにされていた。2巻はご覧の通り、赤。1巻は青がベースとなっていて、その並ぶ様はなんとも言えない雰囲気をただよわせていた。手にとってみると、予想通り祖父江慎のデザイン。ちょっとめくってみると……素晴らしい。しかし一つ問題が。というのはこれが怖い話の本なのである。私は怖い話は苦手。いや本当に苦手ならまだいいのだけれど、ついきいてみたい、見てみたい、という気持ちがむくむくと起き上がってきて、であとで夜一人になって後悔するのである。だからあんまり眺めているとつい読んでしまいそうなので、早々に書店を立ち去ったのだけれども、そのあとも気になって仕方がない。結局翌日もその書店に行き、2巻だけ買ってしまいました。読むわけじゃないから1でも2でもどちらでもよくて、2にした理由は1の方が表紙の写真が怖い、というだけのこと。1の写真は何か古い集合写真のようなもので、2の方はアワビか何かの貝殻。この意味は全くわからなかったのだけれども、本文中に出てくるものらしい、ということがあとでNiftyのフォーラムでわかった。これを口絵にしないで表紙に持ってくるところもすごい。図書館で借りた人にはこれは見られないわけだし、買った人でも気づかない人もいたりして。

なによりもすごいのは、この本文組のきれいなこと。きっと読みはじめたらスラスラと一気に読んでしまいそうである。しかし、恐ろしいのはこの本が一気に読んではいけない本であること。99の怖い話が集められていて、読み終わった時にもしも自分の怖い体験などを思い出してしまったら、そこで百物語が完成してしまうのだから。

そして、こんなこと他の誰にもできない!と思わせるのが、見返し、目次、別丁扉と続く最初の導入部分。これはもう実際に見ていただくしかないのですが、これといい、各章扉の裏が色刷りになっていることといい、これを許した編集者もすごい!と思います。なかなか売れているようですし、なにせこの本のHPまである。というわけで、このコーナーで紹介する本には珍しく、簡単に手に入るものなので興味のある方はぜひ。

ところで、これを書いている間にいくつか読んでしまいました、うう。
2000年11月05日(日)14:52 PINO - 2 comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『漢聲69 手打中國結』

中国結
1983年
漢聲雑誌社
200頁
外苑前にワタリウムというギャラリー&ショップがあります。ここに行くと何も買わずには帰れない、のであえてあまり足を向けないようにしているのだけれど。2階から上がギャラリーで現代美術の展示が多い。1階のショップではポストカードやグッズを売っていて、いつまでも握っていたいような不思議な感触の牛の人形を買ったことがあります。そんな感触だから……いつまでも握っていて真っ黒になってしまいました。そして一番の危険地帯は地下の書店。特に写真集が充実しています。しかしここで写真集を買いまくっていると破綻するので、チェックだけして買うのは神保町の古書店源喜堂。新品主義だから古着も中古パソコンも中古車も嫌いなのだけれど、高価な本だけは目をつぶる。
そのワタリウムで偶然見つけたこの本は、もう装幀の常識をひっくり返すようなすさまじいもの。上の写真で伝わるといいのですが、表紙は段ボールでできています。黒いのはゴムヒモ。でもそんなのは序の口で、ものすごいのが中身。本文用紙が無意味に(?)4種類。なんで無意味かというと、全面に極彩色で印刷していたりするからもう紙のテクスチャなんてどこへやら。その極彩色って言うのが、そうそうこれは飾り結びの結び方の本なのだけれど、全面に紫の地色があって、紐は緑で手は黄色、っていう図解が。文字は赤だし。次のページは地色が緑で……でもって折ごとに刷り色の組み合わせまで変わるから……内容を知らずに遠めに見たら電波系、みたい。普通の書店には置いていないと思いますが、もしも上の写真の表紙の本を見かけたら、どんなに時間がなくても中を開いてみて。中国パワーに圧倒されることうけあい。
2000年08月05日(土)10:55 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『黒に染める 本朝ピクチャレスク事始め』 高山 宏

Floralia du verbe: Pour la Litterature manieriste by TAKAYAMA Hiroshi

黒に染める
1989年/ありな書房
3330円+税
280頁
造本・図版構成:工藤強勝+上田宏志
この本に出会ったのは大学生の時。大学の売店にはあまり紙の種類がなくて、卒業制作に使う紙を選ぶために「青山見本帖」にちょくちょく通っていました。「青山見本帖」というのは(株)竹尾のショールームで、紙を買えるだけではなく、いろいろ相談に乗っていただけます。学生の頃なんて紙の特性に関してはほんと素人でしたから、本当にお世話になりました。卒業制作でシルクスクリーン印刷をやると言ったら、たまたまあった田名網敬一氏のシルクの版画も見せていただけて、プロの仕事に感動したものです。
その竹尾で出している紙見本には、普段紙を選ぶときに使うミニサンプルの他に、一種類の紙で一冊になった大きな物があります。こちらはインクの乗りや再現性がわかるようにかなり凝った造りになっているものが多いのですが、「ロベール」という紙見本のデザインをされたのが工藤強勝氏。ちなみにこの「ロベール」という紙は、銅版画の紙を思わせるようなふわっとした暖かい紙で、なかなか好みの質感なのですが、値段が高めなせいもありいまだ仕事で使ったことはありません。その紙見本のデザインは工藤氏が手がけられた本のカバーを色や加工方法を変えて再現したという、まあ手抜きといえば手抜きかもしれないのだけれど、その文字の扱い方にはとても魅かれるものがあり、これらの本を手に入れたい、と切に思ったのでありました。ちなみにそれらの本とは、

1. 『モダンの五つの顔』マテイ・カリネスク=著/富山英俊+栂正行=共訳/せりか書房
2. 『青い狐』マルセル・グリオール+ジェルメーヌ・ディテルラン=共著/坂井信三=訳/せりか書房
3. 『ミハイール・バフチーンの世界』カテリーナ・クラーク+マイケル・ホルクイスト=共著/川端香男里+鈴木晶=共訳/せりか書房
4. 『独身者の機械』ミッシェル・カルージュ=著/高山宏+森永徹=訳/ありな書房
5. 『憑霊信仰論』小松和彦/ありな書房
6. 『記号と言霊』鎌田東二/青弓社

なのでありますが、なにぶん学生時代のこと、全部買えるわけではなく(版元から想像できる通りどれも高価な本ですし)特に2〜4の間でものすごく迷ったのですが、そうしているうちに見つけたのがこの『黒に染める』。この本はカバーは勿論のこと、表紙、扉、そして本文の全てのページが緻密な工藤氏の仕事、という感じで思わず買ってしまったのでした。
見返しと別丁扉は「レザック」という紙を使っているのですが、上記のごとく紙の種類の少ない大学の売店で売っていた数少ないテクスチュアのある紙が「レザック」と「OKサンド」。しかし指導教官は「レザックを使った作品は受け付けない」とまで言い放つほどのレザック嫌いでしたから、一度も使ったことはありません。どんな紙かというと、おそらく皆さん、小学校の学級文集の表紙などで目にしたことがあるのではないかしら。レザックとはおそらくレザーを意識しているのか、皮っぽい模様が型押しされていて、その柄も下品なのだけど、それ以上に品がないのがその色。結構色数はあるのですが、どれもこれも……文集の表紙は変な緑や赤じゃありませんでしたか? まさにそれ。しかしこの本ではそのレザックの白に赤のベタを刷っている。そうするとあの品のない紙がしっとりとした質感の紙に変わるから不思議。今見ると、この本ってすごく低コストだ。それでこの雰囲気を出しているのはやはりすごい。本文組や各章扉などいちいちすごいのだけれども、あとは書店で実際に手に取って確認してみてください(まだ売っているよね?)。
さて内容ですが……私は読み始めた本は途中でほうりださないことが自慢(?)なのだけれども、これは2、3回読みかけて、それでも一章すら読み終えてないという珍しいもの。何せ辞書なしでは一ページたりとも読むことができません。最初のうちは辞書を引いては欄外に意味を書きだしていたのだけれども、あまりに馴染みのない言葉のせいで同じ語を何度も引いてしまうことに気付き、今度はレポート用紙に書きだして、それを横において読む、ということまでしたのでありますが。で、結局図版だけ眺めて楽しむ、ということに終始しています。高山氏は「is」の常連でもあるのだけれど、最近はだいぶ文章が平易になってきた気が。少なくとも「表象」に「ルプレザンタシオン」とか「円環の中に閉じる」に「エンサイクロペディックな」などのルビをふることは減ってきたみたい(このてのルビって文章を組む側からするとかなり面倒)。そのことが「いち押しガイド」に書かれていた「お金の問題」と関係があるかどうかは定かではないけれど。
2000年07月02日(日)16:45 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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