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『スノウ・クラッシュ』 ニール・スティーブンソン

Snow Crash by Neal STEPHENSON/ 日暮雅通=訳

ISBN-4756120032

1998年/アスキー
2400円+税
472頁
ブックデザイン:
鈴木成一デザイン室
私はSFが嫌いだ。本当に面白いSFが書ける人は才能と想像力にあふれたほんの少数の人だけだと思う(故星新一氏とか)。私の嫌いなSFは、きっちり人物描写ができないのを未来社会では人種が混ざり合っている、との理由でごまかし、つじつまのあわなさを仮想世界だとかでごまかす、自己満足小説なのである。こんなことを書くと、無数にいるネット作家達を敵にまわしそうだけれども、素人小説にSFが多いのもそのせいではないか? 歴史小説は思いつきではかけないけれども、SFなら書ける、レベルは別にして。
この本はゲラの段階で斜め読みする機会があったのだけれども、その時はうんざりしながら読んだ。YTやらDa5idやらの国籍不明な名前。加えて「ガーゴイルとなってメタバースにログインしたアヴァターは……」なんて意味不明な言葉の連続。
でもなんか気になって、本になってからもう一度読んだ。結論、この本は斜め読みしてはいけない、真剣に読まなければ。
舞台は未来社会のアメリカ。フランチャイズ国家なるものが乱立している。主な国家を牛耳っているのが、イタリアマフィア、香港人、カルト教祖、などであって、イタリアマフィアが重装備の高速車を使ってピザの高速配達をして収入を得たりしているのが、なんか映画『ブレードランナー』で「強力わかもと」の看板を見たときのようでおかしい。主人公の少女YTは、バイク便ならぬスケボー便をやっていて、これまた特殊なスケボーでワイヤーの先に磁石がついたものを投げて、車にくっついて速く走るという仕組み。未来だったらもっといくらでもすごい手段がありそうなのに、なかなかどうしてアナログだ。で、思ったのは、面白いSFって、未来だからといって走りすぎずに、ちょこっと先ぐらいで止めている。ルールのないゲームがつまらないように、何でもありの世界なんて楽しくない。極端な例だけど、「ドラえもん」だって空を飛ぶのに竹とんぼみたいなものを使うアナログさがいいんですよね。ある意味で「絶対ない未来」なわけで。
ところで本の帯に『ニューロマンサー』の再来、みたいなことが書いてあるのだけれど、『ニューロマンサー』って何?誰か教えて。
これと『ダスト』、どちらを98年のベストにするかはかなり悩むところ。というかこの本、97年と勘違いしていたので、『ダスト』をベストにしてしまいました。全然違うタイプのSFなのですが甲乙付けがたい。
2000年04月06日(木)03:44 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『ダスト』 チャールズ・ペレグリーノ

Dust by Charles PELLEGRINO/白石朗=訳

ISBN-478971330X

1998年
ソニー・マガジンズ
1800円+税
672頁
イラスト:森本晃司
装丁:花村広
ソニー・マガジンズというとタレント本やらゲーム攻略本やらのイメージが強かったのですが、なかなかどうして、翻訳書籍も頑張っています。翻訳モノにしては値段も手ごろだし、新しい作家を次々紹介しているし。売れている『ブリジット・ジョーンズの日記』もここですね(私はあまり面白いとは思えなかったのだけれど……でももうじき出る続編は面白そう)。で、この会社の翻訳モノは面白い!と思うキッカケになったのが本書。実はこの本、頂いたのですが、最初は全然読む気が起きなかった。その第一の理由は帯のコピー。「あなたのバイオ・サスペンスを凌駕する戦慄の黙示録!」に加えて、デザインも。表紙4色、カバーは穴あり箔押しあり、というお金のかけようなのですが、防毒マスクの顔やら骸骨やら、心臓のようなものやらが燃えていたりするようなイラストとこの帯コピーとで、すっかりバイオ・パニックものだと思い込んでしまいました。流行りのバイオハザードで町が壊滅状態とかになって、勇気ある科学者、それも男女が立ち上がり……とアクションありラブシーンありのハリウッド映画みたいなものに違いない、と。
それがたまたま手元に他に読むものがないというだけの理由で読み始めたのだけれど、面白いことといったら! 電車は乗り過ごすは、夜はなかなか寝られないはといった感じで672ページを一気に読んでしまいました。ネタバレにならない程度に内容を紹介しますと……最初の舞台はアメリカ、ロングアイランド。ここで謎の微生物(その正体はすぐに明らかになるのですが)が大発生し、住民は一夜にして死滅してしまう。同時期に世界各地で生物の異常発生がおこり、人類は食糧危機に見舞われる。その謎を生物学者たちが解明する……と、こんな紹介の仕方では帯文を笑えなくなってしまいますが、この本のすごいところは、著者があらゆる分野の学者たちからアドバイスをうけていること。本書の最後に「リアリティ・チェック」と題して、あとがきを載せているのだけれど、これを読むと『ダスト』の世界は現時点ではフィクションであるけれども、将来的にはおこりうることなのだと、恐怖を感じる。作中でコウモリによって死亡する熱帯動物学者ビル・シャット氏は実在するコウモリの研究者で、作中での死に方は本人の要望なんだそう。そういった学者が支持しているわけだから、これは全くの荒唐無稽な物語、というわけではないのに違いない。だから私のような、この分野の素人が読むと、なんの矛盾も見いだせずに納得させられてしまうのであります。まあ専門家の方が読んだら問題点もあるのかもしれませんが、このての本の中にも単なるパニックものでない、十分に調査されて書かれたものがあるのだな、と見直すきっかけとなる一冊でした。
同社からは4月に違う著者ですが、また面白そうな科学ホラー(というジャンル名は気に入らないが)が出るので、楽しみにしています。いずれまたご紹介しましょう。
2000年03月26日(日)02:57 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『赤目四十八瀧心中未遂』 車谷長吉

by KURUMATANI Cyokitsu

ISBN-4163174206

1998年/文藝春秋
1619円+税/280頁
装釘:関口聖司
装画:奥村土牛「蓮池」
装釘という表現は初めて見ました。それはおいておいて。
文学賞受賞作って、なんか読んでみるとピンと来ないものが多い。特に直木賞。最近では『鉄道員』。うまく読者を感動させるツボみたいなのを心得ているようだけれど、それが文学としてすぐれているかどうかは別でしょう? それに賞をあげるっていうのもねえ……。
さて本書も直木賞受賞作であります。『いち押しガイド』の去年版で、編集部も含めいろんな人に絶賛されていたので読んでみる気になったのですが、なにせ直木賞が気に入らない。パラパラ中を見てみると、関西弁だし、極道は出てくるしで、『いち押し』がなければ絶対に読まないよな〜と思いながら借りてくる。
が、読んでみると……もうすごいの一言です。ほんとすごいとしか言い様がない。だいたい、タイトルで結末を出しちゃっているのもすごい。この作品において結末は重要ではなくて、そこにひたすら進む流れがすごいというか。流しに落ちた虫はどんなに泳いでも排水溝に流れていくしかないみたいな(作中にはこんな陳腐な比喩はもちろん出てきません、念のため)。文章もすごい。前に読んだ柳美里や同じころに話題になった辻仁成にみられるような、もったいつけてわざと難しい言葉を使っている、という風ではなくて、この人の文章には気迫というか、覚悟のようなものがある。「併し」という表現を多用していて、実は私は最初これが読めなかったのでありますが、これは「しかし」ではダメで「併し」なのだなというのがあるわけ。
すごいというだけで全然説明できていないのですが、とにもかくにもお薦めです。今年の私のいち押し(世の中からは1年遅れか)。
なんか本を選ぶ勘、のようなものを失ってしまったような気がしました。学生のころって、専門書ならいくらでも大学図書館にあるけれども、小説の類いを読もうと思ったら買って読むしかなかった。で、当然お金もないわけだから、書店で迷いに迷って、これだという本を買っていたわけです。社会人になったら、本代なんてそんなに痛くないし、何よりも、暇を潰すための本ならいくらでも会社にあって、あるものを適当に読んでいた、というのがその勘を失わせたのかもしれません。なんか悲しい。
1999年12月14日(火)14:37 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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