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『柔らかな頬』 桐野夏生

by KIRINO Natsuo

ISBN-4062079194

1999年/講談社
1800円+税
368頁/四六上製
装幀:多田和博
装画:西口司郎
妊娠すると食べ物の嗜好がかわるというけれど、本の好みもかわりました。あんなに絶賛していた車谷長吉なんて絶対に読む気がしない。近所の図書館には、大好きな筒井康隆も充実しているというのに、これまた今一つ手がのびない。人からきいたり、書評を読んだりして気になっていた本は手帳に控えてあるのだけれども、それを眺めてもどれもピンとこない。かくして図書館に行ってもなかなか借りる本が決まらずに、あっちにフラフラ、こっちにフラフラと時間ばかりかかります。図書館は暑い中歩いて行くにはちょっと辛い距離にあるので、家人に車で乗せて行ってもらうのだけれども、本を読む習慣があまりない家人は待っている間とても暇そう。なので慌てて適当に手近な本を借りてみるのだけれども、いざ読みはじめると「こういうのが読みたかったんじゃない〜」ってことになったりして。のんびり本を読めるのも今のうち、となんか気ばかり焦ってなかなかこれという本に出会えない。
本に限らず、ゲームもしなくなった。時間潰しに入ってみたソフト店で大好きなTomb Raiderがいつのまにか5まで出ているのを発見(私は3までしか持っていない)。このゲームは主人公の女性が宝を探して謎を解きながら探検するものなのだけれども、舞台となるのが遺跡だったり、南の島だったりして、それがなかなか雰囲気があって気にいっていた。でもやる気が起きなくて結局買わずじまい。まあ銃で撃ったり、落下して死んだり、とあまり胎教にはよろしくないと思われるけれども、特にそういうことを意識しなくても手がのびないのは、もしかして胎児に操られているんだろうか。

で、この本を読んでいる間中、帯に大きく書いてある
私は子供を捨ててもいいと思ったことがある
っていう一文が気になって仕方がない。電車の中などで読んでいると「あの人、妊婦のくせにあんな本読んでいるよ」という非難の目が向けられているような気がしてきて(そんなわけないんだけど)なんか落ち着かない。なのでコソコソと読んでいました。

コソコソ読むにはけっこう厚い本なんですが、読み始めはミステリだと思っていました。子どもの失踪事件から始まるのだけれども、その母親と、その子の失踪時に滞在していた別荘の持ち主とは不倫関係にあったり、母親は10代で家を飛び出してそれきり音信不通にしている家出人であったり、といろいろといわくありげな人物であることがわかる。途中から若くして末期癌のために退職した刑事と一緒に子どもを探すことになったりもするのだけれども、この刑事が死ぬ前に犯人の夢を見たりして、でも結局それが本当の犯人かどうかもわからず、というわけで決してミステリではない。かといって内面に迫る本かというと、主人公である母親はちょっと変わった人、という感じだし、刑事にしてもやはりまた変わり者で、しかも若くして死にゆく人の心境というのも今一つ伝わらなくて、誰にも感情移入できないまま読み終わってしまう。死んでしまう刑事、不倫が夫に知れて家にかえらない母親、その夫、姉を探し続ける母親を見てきた妹、不倫相手の男も妻子と別れて風俗嬢のヒモ暮らし、と誰も救われないまま終わってしまい、なんとも後味が悪い。

この作家の本を読むのは初めてだったのだけれども、なんとも楽しくなかったので、やはり次は話題作の『OUT』を読まないとダメかしら。

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なんとも恐い。イラストも恐いし……これじゃあホラーだ。
2001年07月30日(月)15:20 PINO - No comments - 2 TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『黒猫フーディーニの生活と意見』 スーザン・フロンバーグ・シェーファー

The Autobiography of Foudini M. Cat by Susan Fromberg Schaeffer/ 羽田詩津子=訳

ISBN-4105381016

1999年/新潮社
1500円+税
192頁/仮フランス装
装画・挿画:かとうゆめこ
装幀:新潮社装幀室
犬派、猫派というふうによく分けられるけれども、私は犬派。といっても別に猫が嫌いなわけじゃない。でも猫を飼ったこともないし、飼おうとも思わないのは、家の中で動物が放し飼いになっているのがイヤだから。なので犬も屋外で飼うのでないとイヤ。私が行っていた大学には野良犬や野良猫がすごく多くて、なんかわざわざ捨てに来る人までいるらしい。実際に車から犬を捨てる現場を見てしまったこともあり、車から下ろされた犬は最初は周りをかぎ回ったりしているのだけれど、車が走り去るのを見て慌てて追いかけるのに時すでに遅し、しかしまあ飼っていた動物に対してどうしてあんなことができるのでしょうね。大学って言うのは一見野良動物たちにはいい環境のようで、広いし、学生は餌をくれるし。でも増え続けるのを野放しにしておくわけにもいかないようで、時々保健所がやって来るのか、まったく犬猫がいなくなるときがある。捨てる人はそこまで知っているのかな。で、猫を飼ったことがない私だけれども、そんな野良猫達に餌をやったりしたことはある。それでわかったのだけれども、猫を飼うわけにはいかない致命的なことが。それは「猫蚤アレルギー」だということ。それ以来猫を避けるようにしているので猫嫌いだと思われるのだけれども、決して嫌いなわけではないのです。

と、久々に前置きが長くなりましたが、本書は野良猫から飼い猫になったフーディーニが、若い猫グレースに語った自伝、というもの。猫が語る小説というとまず思い出すのが『吾輩は猫である』だけれども、猫は何でこんなに語りたがるんでしょうね。

猫の習性に詳しい人なら、もっともっと楽しめたかもしれません。でも上記の程度しか猫と関わりがなかった私でも十分面白かった。例えば、猫好きにはニャアニャアと鳴きまねをして猫に話しかける人がいたりしますが、あんなのはどうせ猫は猫の言葉として認識しているわけがない、と思っていたのだけれども、本書ではちゃんと猫にその言葉は届いている。なんだけど決して会話ができるわけではなくて、猫からしたら脈絡のない単語を連呼しているとしか聞こえないのだ。なのでよその猫からは「頭のおかしい人に飼われてかわいそうに」って目で見られてしまう。これはちょっとハッとさせられて、むやみに動物語で話しかけるのはやめよう、と思ってしまうのでした。でも動物語で話す人って圧倒的に犬派よりも猫派に多いと思うんだけど。

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猫派でもないのに本書を借りたのは、装幀の、いや装画のせい。本文中にもところどころ挿画があるのだけれども、これがとてもいい感じ。
2001年07月27日(金)15:10 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『すいかの匂い』 江國香織

by EKUNI Kaori

ISBN-4103808039

1998年/新潮社
1300円+税
228頁/四六上製
装幀:安西水丸
江國香織という人はもっと甘ったるいラブストーリーなどを書くのだと思っていました。辻仁成との合作……ではなくてああいうのはなんて言うのだろう、ともかく『冷静と情熱のあいだ』は読んではいないけれども、そういう試み自体がなんか甘ったるい。単行本を読むのは本書が初めてなのだが、以前、幻冬舎のPR誌「星星峡」に連載されていた「スイート・リトル・ライズ」でのテディベア作家の妻と会社員の夫の生活は、ラブリーな調度品に囲まれた甘ったるいもので、でもそれぞれがいかにもな相手と不倫をしていて……っていうちょっといらいらさせられるようなものだったし。

ところが本書はそういったイメージとは全く違った。短編集なのだが、どれも少女時代のちょっとぞくっとするような思い出が描かれている。夏休みの旅先で知りあった子に、自分がおしゃれな学校に通っていて人気者である、というような嘘をついてしまうとか。そして交換した住所は帰りの電車で捨ててしまい、その後手紙が来ても返事も出さず。こういう残酷さってなんかとても女の子っぽい気がする。実際にこれに近いようなことを私もやったことあるし。だから読んでいるとどこか懐かしいような、それでいて思い出さなくてもいいことを思い出してしまう居心地の悪さを感じるような、なんか落ち着かない気分になるのでした。
最終更新日時:2007年01月15日17:34:28
2001年07月09日(月)14:40 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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