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『ブレイクスルー・トライアル』伊園 旬

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ISBN978-4-79665673-3
2007年1月
宝島社
1680円
333頁/四六判上製丸背
これも読み終わってからちょっと経ってしまいましたが。

第5回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
セキュリティ会社が最新の技術を駆使して作った研究所。そこに入って、数々の最新警備システムを突破し、マーカーを持ち帰ると賞金がもらえる「ブレイクスルー・トライアル」なる大会が行われる。
そこに参加する主人公&友人(それぞれちょっと訳あり)、同業他社のチーム、強奪したダイヤがその研究所に運ばれたことを知って取り返しにいく強盗たち、管理人の娘(美人)&マッチョな恋人、となんかマンガっぽくもある登場人物たち。
読んでみて、うーむ、ミステリーとは呼べないなあ。特に何か謎を解明するわけでもなく。でもエンターテインメントとしてはアリなんじゃなかろうか。設定も、登場人物たちもあり得ない感じではあれど、なかなかにコミカルで楽しい。ただあくまでもコミカルで緊迫感はない。肝心のトライアルだってかなり危険なもののはずなんですが、全然そういった緊張感は伝わって来ないのだよね。そもそも物語の大半はそこに至るまでのもろもろであって、トライアルに入ってからはあっけない。まあその辺がやはり新人の力量不足&調査不足、なんでしょうか。最新の警備システムなんてものは想像だけで書くのは難しいだろうし、かといって簡単に詳細を教えてもらえるものでもないだろうからねえ。
それでも誰も殺されることもなく、軽快に進んでいく物語は不快ではない。まだまだ、な感じだけれども、これからに期待、というところでの受賞なのでしょう。
2010年05月01日(土)15:01 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『望みは何と訊かれたら』小池真理子

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ISBN978-4-10-409808-8
2007年10月
新潮社
1995円
487頁/四六判上製丸背
読んでからちょっと日が経ってしまった。

主人公の女性は、子どもも成長し、夫との事業も成功し、と平和に暮らしている。仕事で行ったフランスで、空き時間に入った美術館で、ある男と再会するのだが。
女性には学生運動の過激な活動家だった過去がある。その団体は山奥のアジトで爆弾を作り、そこでは粛清も行われた。逃げ出して、公園で倒れていた女性を連れ帰って助けてくれたのがその男である。それはまた奇妙な共同生活でもあった。

同じ言葉なのに昔と今とでものすごくかけ離れている物の一つが「学生」ではないだろうか。今の学生たちがあんな風な活動家になることは全く想像できない。私の頃にも学内の池の周りでハンストする学生たちがいたけれども、それは過激さとは程遠い、なんかのどかな風景でさえあったし、バリストのため教室変更、なんてことが一度だけあったけど、立てこもっていたのはたったの2人だったし。
だから安田講堂とか浅間山荘とかいった映像を見ても、それは本当に遠い昔のことのようで。そう、戦争と同じくらい遠いことのようで。

けれども本書を読んでみて、活動家となるような学生も、自分たちの頃の学生も、そして今の学生もそんなに遠いものではないのかもしれない、と思った。そう、みんながみな過激な思想や理念を持って活動家になっていったわけではないのだ。なんとなく誘われて行ってみた、という人も多かったのだろう。行ってみて、なんか楽しそうだったり、似たような読書傾向の人がいて本の貸し借りができたり、はたまたちょっと魅力的な人がいたり。そうだよなあ、みんながみんな、国をどうにかしようなんて思っていたわけじゃあないのだ。
もしも自分がその時代の学生だったら、やはりそういった中に巻き込まれていってしまうような気さえしてくる。学生の頃って世間知らずのくせに、妙に高いプライドやら選民思想のようなものがあって、容易にそういう中に入っていきそうに思えるのよね。
そう思うと、学生運動なんていう自分とは程遠いことをしていた主人公にも親近感が持ててくる。

一方、アジトを逃げ出してからの男性との生活。こちらは全く理解ができなくて。リアルな世界から、幻のような世界へ。その対比を書きたかったのかもしれないがやはり理解しがたいよ。

と、全体を通してみて、面白い部分と理解しがたい部分とが共存する小説でありました。
2010年04月29日(木)16:12 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『三味線ざんまい』群ようこ

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ISBN978-4-04171719-6
2008年9月
角川文庫
500円
204頁/文庫判
カバーイラスト=あおきひろえ
カバーデザイン=都甲玲子(角川書店装丁室)
ちょっと久しぶり。
本は読んではいたのですが、なんか感想を書くというのが面倒になったりもして。今までは書き終わるまでは次を読まないようにしていたのだけれども、読んでしまうとますます面倒になりますねえ。
ま、やめても全く困らないものではありますが、せっかく何年も続けてきたのだからもうちょっとやってみよう。

えー、実は縁あって三味線を習い始めました、どっぷりハマリ中。そうなると読む本まで三味線関連に……。
作家の群ようこさんも三味線を習っているそうで(しかも名取)、群さんは小唄、私は長唄、とジャンルは違うのだけれども、読んでいて「わかるわかる!」と叫んでしまいそうな本でありました。

三味線のお稽古ってすごく楽しい至福の時間でもあるのだけれども、ものすごく疲れる修行の時間でもある。お稽古中は手も耳も目もフル動員、って感じで疲れつつももう終わり?という感じだが、あとで録音のテープを聴いたりすると、もうほんと休む間もなく弾きっぱなし。1回弾き終わった瞬間に先生の「もう1回!」の声が(笑)。でも三味線の場合は先生も一緒に弾くからね(しかも歌うし)、他のお弟子さんもいるからそれを一日続けるわけですよ、すごい体力だ、って舞台も長丁場だからそれくらい耐えられないと無理なのか。
そして群さんもお稽古の後に疲れきっている。お稽古場は浅草らしいのだが、帰りに甘いもの(豆かん)を食べに寄らないととてもじゃないが電車に乗れないらしい。そのうち豆かんだけでは回復せず、どじょうも食べて帰るようになったり。ちなみに私は食べて帰るのは時間的に厳しいので、お刺身を買って帰ることにしている。毎週魚屋さんに寄るからすっかり顔なじみになった。でもお刺身しか買わないからきっと「料理できない」と思われてるに違いない(笑)。
また、帰宅してすぐにさらった方がいいと頭ではわかっていてもできない、ってのも一緒だよ。

群さんは名取で、もう私の知らない世界にまで到達しているのである。で、読み進めて行くうちにどきっとすることも。
まずは浴衣。
どこも「浴衣会」という内輪の発表会のようなことを夏にやるのだが、群さんのところは1年おきに揃いの浴衣を作るのだとか。ひー、そうなの!? そんなに浴衣が増えても困るよう。それ以前にお金が……。私の先生のところはめいめい自分の持ってる浴衣のような気がする……ってあくまでも「気がする」だけなので、夏までドキドキするなあ。
そして一番驚いたのが「名取」。
何度も書いていますが、群さんは名取さんです。でも始めてほんの数年で名取になっているわけですよ。いや、群さんは「全然弾けない」と書いているけれどもそれは謙遜しているだけで実はものすごく上手いのかもしれない。でも数年って、数年って。
その名札を頂きに本部に行く時などは大量のご祝儀袋を用意して、それこそ受付の人から会う人すべてに配らねばならぬらしい。もちろん本部にも先生にもかなりのお金を払うのだろうし、さすがに金額は書いていないが、相当のお金が動いたと思われる様子……。
うぎゃあ、やっぱり和の習い事って不可思議なほどお金がかかる世界なんだよなあ、と改めて思う。
と、なんかダーク(と言っちゃいかんかもしれんが)な香りも嗅いでしまうのだけれども、それでも群さんの
また、お稽古にうかがって、小唄と三味線を習うということだけでなく、人として大切なさまざまな事柄を学ばせていただいた。いちばん大きかったのは、人の言葉に素直に耳を傾けないと上達しないことだ。礼儀もそうだし、特に中年になってからはじめると、自分は何でもできると思っているふしがある。それが見事に覆される。
には心から同感。
日常生活において、自分はちゃんと礼儀正しく振る舞える方だと思っていたんですよ。それがまあ、まだまだまだまだ、全然まだまだだったわけで。ほんとにもう自分はなんにも知らないんだなあ、何もできないんだなあ、というのを思い知らされるわけです。でも「できない自分」を認めることって必要なんだなあと思います。中年、いや「おばさん」ってのは自分を買いかぶりすぎているのがイタイよなあ、なんて日頃思っているのに、自分もしっかりそれに当てはまっていたということを認めるのはちょっと辛くもあるが、でも認めないと進めないよね。

って本の感想というよりも三味線の感想みたいだな(笑)。
でも群さんって特に好きな作家さんでもないので(失礼)、多分エッセイを読むことなんてなかったと思うのね。それが三味線のおかげで読む気になって、そして読んでみたらすごく面白かった。それが他の作品を読むことに繋がるかもしれない。
あ、でも三味線に縁がない人がこれを読んで面白いかどうかは疑問だ(笑)。
2010年04月15日(木)06:59 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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