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『冠・婚・葬・祭』中島京子

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ISBN978-4-480-80410-5
2007年9月
筑摩書房
1600円+税
240頁/四六判上製丸背
装幀=有山達也
中学だか高校だかで文学史を習った。で、そのとき必ず出てくるような名作でも、その後読むことのないものも多い。そしてその文学史で習ったばかりに誰もが読む気をなくした本が……それは田山花袋の『布団』。だって「女にふられてその布団に顔を埋めて泣く」みたいな変態チックな解説がついていたのではなかったか。それを見て読もうと思う人がいたら驚きだ。
この本の著者の中島京子は、そんな『布団』を『FUTON』として現代に蘇らせた人である。なんて物好きな。さぞかし変わった人に違いない、と思いながら『FUTON』ではなくこの『冠・婚・葬・祭』を最初に読んでみた。

そんなイメージを持って読んだら、とても真っ当な小説であった。そして冠婚葬祭という、身内のごたごたやらどろどろやらが出てくることがテーマと思いきや、どれもとても清々しい話で。予想との違いに戸惑ったけれども。
これはやっぱり『FUTON』を読まないとね。
2009年11月05日(木)16:20 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『贋作『坊ちゃん』殺人事件』柳広司

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ISBN4-02-257670-7
2001年10月
朝日新聞社
1500円+税
208頁/四六判上製丸背
カバー画
=J・M・W・ターナー
ブックデザイン
=日下潤一
『ジョーカー・ゲーム』が大人気の柳広司、初めて読んだのは『はじまりの島』だけれども、その時はこんな人気作家になるとは思っていなかったよ。

『はじまりの島』はダーウインとビーグル号という史実を用いながら、無人島で起きた殺人事件を描いている。史実という制約のある中での物語はなかなかに面白かった。
そして今回は、日本人なら誰でも読んだことのあるような夏目漱石の『坊ちゃん』を用い、『坊ちゃん』で主人公の坊ちゃんと山嵐が松山を去った後に起きた、赤シャツの自殺について調べる話である。というと後日談のように見えるけれどもそうではない。赤シャツの死につながる一連の動きは坊ちゃんが松山にいたときにすでに起きていたのだ。なので後日、ではなく、当時を別の側面から見た話なのである。それは後日談よりも書くのが難しいものではあるまいか。それがまあ、『坊ちゃん』に出てくる様々なエピソード……寝床にバッタ事件とか、をうまく利用してきちんとつじつまが合っている様には感心させられる。
でもそういったワザだけではなくて、物語として文句なく面白いのだ。もう一気に読みふけってしまうほどに。
話題の『ジョーカー・ゲーム』もきっときっと面白いのだろうなあ。

ところで。この本を読むには『坊ちゃん』を読んでいないことには全く話にならない。まあ日本人で『坊ちゃん』を読んだことない人はほとんどいないとは思うが、昔学校で読んだだけ、という人はぜひこれを読む前にもう一度読むことをお薦めします。というか私も読んでおけばよかった。
余談ですが、大学に漱石研究をしている先生がおりまして、『坊ちゃん』は初版にかなりの誤植があり、他社の本はそれを元に作っているからますます間違いが増えている(版元の違う『坊ちゃん』を見比べると、なるほど結構違っています)。先生は漱石の手書原稿(だったかコピーだったか)を持っていらして、原稿通りの『坊ちゃん』を出すのが夢、というわけで、当時のワープロ、文豪だか書院だかで学生が分担して入力をしたのである(それで単位が出るのってどうよ)。その後あれは日の目を見たのだろうか……。ともあれそのおかげで『坊ちゃん』の内容についてはよく覚えている方だと思うけれども、それでも再読すればよかった……あ、でも『贋作〜』を読み終わってからまた読む、というのもありですね。

about book design...
坊ちゃんなのに洋画が装画? と不思議に思ったのだが、これがその「ターナーの松」なのだな。
本文はイワタ明朝体オールド。
2009年10月13日(火)16:03 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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『窓の灯(あかり)』青山七恵

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ISBN4-309-01737-1
2005年11月
河出書房新社
1000円+税
130頁/四六判上製丸背
装幀=町口覚
(マッチアンドカンパニー)
第42回文藝賞受賞作。

大学を辞めた主人公マリモは、2階に住み込んで喫茶店の手伝いをしている。
2階の部屋の向かいのアパートにあった空き部屋に若い男性が越してきて、その暮らしをマリモは自室から覗いている。男性の元には付き合ってまだ間がないような女の子も遊びにくる。
マリモは散歩をしながら、部屋でヨガをやる女性の様子を覗いたりする。
そして自室の壁に耳を当てて、隣のミカド姉さん(とそこにやってくる男たち)の様子をうかがってみたりする。

本の紹介には「ゆるやかな官能を奏でる」とあるけれども、特に「官能」は感じられなかったなあ。
覗きと官能、というと昔見た映画『仕立て屋の恋』を思い出すのだが、あれは美しい女性と、じっとりと吸い付くような視線が本当に官能的だった。
一方この本は、視線の主が若い女性だからか、それともミカド姉さんの素敵さがあまりイメージできないからか、ちっとも官能的ではないのである。
じっとりどころか、さらりと読み終わってしまったかな。
2009年10月07日(水)17:05 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
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