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『町でいちばんの美女』 チャールズ・ブコウスキー
The Most Beautiful Woman In Town & Other Stories by Charles BUKOWSKI
青野 聰=訳
ISBN4-10-527601-8
1994年/新潮社
2524円+税
364頁
カバー写真:藤原新也
装幀:馬場崎仁
これまた有名な本であるのだけれど、私は内容について何も知らないまま読み始めた。それにしてもなんて素敵なタイトルでしょう。「町でいちばんの美女」。声に出して何度も唱えてしまいそうな「町でいちばんの美女」。それはいったいどんな人物なのだろうかと、まるで美女に会いに出かけるかのように、嬉々として本を開いたのでありました。
しかし彼女は美しいだけの人ではなかった。『
ナチュラル・ウーマン』の時にも書いたように、私は美しい人には光の中で輝いていて欲しい、と思ってしまうから、彼女にはショックを受けた。辛かった。悲しかった。
ところがその後の短編たちを次々と読むうちに、疑問がわいてきた。果たして彼女は本当に美しかったのだろうか?その町は、実は若い娘なんかあまりいなくて、小さな掃きだめのような町なんじゃないか、と。なぜなら短編たちはどれもこれも不潔で、下品で、堕落していて、本を投げ出したくなるようなものだったから。初期の筒井康隆の作品の中にも吐き気をもよおすような描写のものがあるけれど、それらは目を背けながらも、そっと横目で盗み見てしまうようなものがあるのだが、これはもうたくさん、という感じ。素敵すぎるタイトルとしゃれたカバーから想像していた世界とあまりに違うので頭がついていけなかったせいもあるかもしれないけれど。
こういう本を読んで、理解できなかった、とここに書いてしまうことには結構勇気がいったのでありますが。というのも「なんだ、コイツ偉そうなこと書いているくせに読解力がないじゃん」と思われるのが実は恐い。あまりいじめないでね。
読んでいる途中で思い出したのですが、確か伴田良輔氏の『
Chibusa』という本のサブタイトルが「町でいちばんの乳房」じゃなかったかな? もしかすると途中で変わったかもしれませんが。多分この本からとったのでしょう。伴田氏なら好きな世界かもしれない。
『沙羅は和子の名を呼ぶ』 加納朋子
by KANOU Tomoko
ISBN4-08-774430-2
1999年/集英社
1700円+税
320頁
イラストレーション:
塩谷敦子
ブックデザイン:
鈴木成一デザイン室
ここではいろんなジャンルの本を読んでいることをウリにしていますが、本当は私の読書傾向はかなり偏っている。図書館では知らない作家の棚の前は素通りだし、文学賞の類いには全く興味がないから新しい作家の名前は知らないし。そんな私が救われているのは、会社に本がたくさんあるせい。忙しくて図書館に行けないときなど、ほんと重宝します。というわけで、これは会社にあった一冊。
加納氏のことは全く知らなかったのですが、他の書評サイトを見ていると、なかなか人気があるようです。ちなみにWEB上ではミステリ、SF、ファンタジー系が強い。で、世間で評価が高い中、私は苦言を書くぞ。
この本の帯には「珠玉ミステリ短編集」とありますが、ミステリというよりはファンタジーな気がします。だってミステリにしてはあまりにトリックがお粗末。〈
以下ネタバレ注意〉例えば双子が出てくる話があるのだけれど、「私の双子の妹」と言ったときに、私自身が双子の片割れの姉の方なのか、それとも妹が二人いてその二人が双子なのか、ということから起こる勘違い、なんて全然新しさがない。それから一番最初の短編は、医療ミスという重いテーマを取り上げているにもかかわらず、あまりにお気軽で、医療についてなにも調べていない、という感じがする。
ただまあ、ファンタジーとしては楽しめるのではないでしょうか? どの短編も失われたもの(人)がテーマになっているようですが、10代の頃に読んだら、もっと夢中になれたような気がする。というのも「失われたもの(人)は戻らない」という現実を知りすぎてしまったから、それらが戻ってくるこの本の作品たちには素直に感情移入ができないせい。年をとるといろんな知識が増えるけれど、それによって理解できなくなる世界も増えるのだな、ということを実感。
話は変わりますが、この本のタイトルを見たとき、今流行りの(?)多重人格モノかと思いました。本のタイトルって難しい。
『工夫癖』久住昌之
by KUSUMI Masayuki
ISBN4-575-28985-X
1999年/双葉社
1500円+税
256頁
ブックデザイン:
勝井三雄+川又淳
「難しい本ばかり読んでいる」との感想を頂くことがありますが、決してそんなつもりはありません。ただ気軽に読めて、面白いものって意外と少ない。すぐ読み終わるけれど、何も残らない、みたいなものが多い気がします。
話は変わりますが、私の勤務先では仕事中に本を読んでいても怒られない。まあ残業もつかないので、それぐらいは大目に見て欲しいっていうのもありますが。で、一時期流行ったのが久住氏の『
夢蔵』。これは夢を絵と文章で表したものなのだけれど、やけに具体的な夢もあれば、全く意味不明のものもある。それで面白いと思う夢って人それぞれなんですね。会社でどれが面白かったか、という話をしたときに、皆違うのが興味深かったです。ちなみに私は「プシューという箱」という、ただ箱があってそれがプシューと音を立てているっていうのがおかしくてたまらなかった。
そんな久住氏の新刊を図書館で見つけたので借りてきました。オジハルこと、久住氏のお父様には工夫癖がある。工夫癖とは癖だから、日曜大工のような趣味とは訳が違う。見た目は気にしないし、その辺にあるものを使うし、なにより計画性がないから、うまく使えないこともしばしば。一番おかしかったのが、オジハル氏にはトイレのドアに鍵をかける習慣がないので、使用中に家族がドアを開けてしまうことがある。なので使用中であることが判るような電気をつけようと、壁に穴を開けたりしちゃうまでするのだが、そんなの鍵をかければすむことなのに……。と、オジハル氏は万事そんな調子なのだけれど、著者はそれだけでは飽き足らず、オジハル的な者を探しにカメラ片手に街へ出た。街中のオジハルは、トマソンやVOWにも似ているけれど、全くの無意味なものではない、という点で違っています。悲しいほどの工夫が見受けられる。で、それは癖だから、まさにしなくてもいい苦労、じゃなかった工夫をしちゃっているのが面白悲しい。
周りにオジハル氏みたいな人がいたら楽しいでしょうけど、オジハル夫人は大変だ、まったく。
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