«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 132 | 133 | 134 |...| 137 | 138 | 139 || Next»

『ナチュラル・ウーマン』 松浦理英子

by MATSUURA Rieko

Amazonで見る

ISBN4-309-00932-8
1994年/河出書房新社
1456円+税
172頁
装幀:ミルキィ・イソベ
柳美里氏のときもそうだったのですが、このひとも熱烈なファンのいる作家ですから、取り上げるときはやや緊張します。実は小心者です。なんか最近の女流作家ものってあまり読んでいません。小池真理子氏や宮部みゆき氏などはぜひ挑戦してみたいのですが。
本書はレズビアンのお話。常日頃思っているのだけれど、女性の方が男性よりも同性愛に寛容な気がします。それはともかく。
主人公容子の一人称で物語は進みます。交際はしているけれど恋愛感情はない夕記子。バイト仲間でだんだん好きになってきている由梨子。そして過去にただひとり熱烈に恋した花世。彼女達の行為や感情に嫌悪感を持ってしまったら、一ページたりとも読み進めることは出来ないでしょう。何の先入観もなく読み始めた私は(本書は三つの物語から出来ているのだけれど)最初の話に出てくる夕記子には正直うんざりさせられました。それは露骨すぎる二人の行為に対する嫌悪からなどではなく、ただこの女が嫌だったから。相手を激しく罵りながらも心の中では負けを認めている。スチュワーデスをしている彼女はきっと外見は美しい人であるだろうに、中身がこんなに屈折しているのが悲しかった。美しい人が嫌いだなんて人はいるでしょうか? 外見にはこだわらない、なんて言っていても、それは美しいのがいやな訳じゃないでしょう? 単に優先順位が低いだけで。同性だって美しい人が好き。街でとてもきれいな人を見かけたら、思わず目で後を追ってしまったりしません? で、そんな美しい人には光の中にいて欲しい。屈折してしまった美しい人を見るのは悲しい。冒頭で彼女は経血で汚してしまった寝具の処理を主人公にさせているのだけれど、美しい人がそんなことをさせるのが私は耐えられない。それだけでもうこの本を読むのが辛くなってしまったのです。
しかし、二つ目の由梨子に関する話には引き込まれました。彼女のような人がもしも周りにいたら私は気になって仕方ないだろう。友だちになりたいけれど、声をかけることが出来ずに悶々とするに違いない。主人公はうまく彼女と友だちになったけれども、好きになりすぎて触れることも性夢を見ることさえも出来ない。こういう気持ちって同性愛でも異性愛でも同じだと思う。私も大好きな人は遠くから見ていられるだけでよかったから(なんてこと書いて家人が見たら怒りそうですが)
三つ目の話は時間的には一番古くて花世との物語。それはあまりに激しくて、そして別れはあまりに辛くて。世の中のカップルできれいな別れを迎えられるのはどれくらいでしょう? 誰でも苦い思い出の一つはあるはず。
この本を読むときっと誰でも自分の恋愛を振り返らずにいられないでしょう。利害関係が一致しただけの交際。好きになり過ぎて届かなかった恋。そして二度と繰り返せないほどのエネルギーを必要とした恋。そういった関係が女性同士であるからこそ、より激しく感情的に描写されている。男女の関係にも当てはまることだけど、でも置き換えて読むのはルール違反かもしれません。
甘いだけのラブストーリーなんてウソ、と思う方にオススメ。同性愛を嫌悪する人にはむきませんが、そういう人のことを私は逆にかわいそうだと思うけれど。
ところで、ミルキィさんの装幀って女性作家に多い気がします。ここで紹介した中では笙野頼子氏の『説教師カニバットと〜』とか。内田春菊氏の本にもありますね。彼女の、中黒を星にしたり、光る感じの紙を使っての独特の雰囲気は確かに女性向きかも。
2000年02月06日(日)00:56 PINO - No comments - 1 TrackbackTrackBack用URLTrackBackフォーム
この記事にコメント:

Name: Mail/URL:
情報を記憶しておく

『101/2章で書かれた世界の歴史』 ジュリアン・バーンズ

A History of The World in 101/2 Chapters by Julian BARNES/ 丹治愛+丹治敏衛[訳]

Amazonで見る

ISBN4-560-04467-8
1991年/白水社
1922円+税
404頁
装幀:東幸見
ここまでサクサクと本を紹介してきましたが、ここにきて、どう書いていいのか悩む本に遭遇。
タイトル通り、10の章と1つの挿入章から出来ています。第一章は「密航者」の題で、ノアの箱船に乗せられるリストに選ばれなかったある生き物が密航者として乗り込み、箱船の内情を暴露する、というもの。実はこの章が一番面白かった。ノアの箱船の物語をそのまんま信じている人は日本にはあまりいないと思いますが、動物たちの臭いやら、食糧問題やらがもっともらしく書かれています。そういえば星新一の『進化した猿たち』という本には、彼が集めた海外の漫画がジャンルごとに紹介されているのですが「箱船」をテーマにしたものもとても多かった。その中でよく覚えているのが、遠ざかっていく箱船を沈みゆく陸地から見ているケンタウロスが「異国の神は我々には冷たいぞ」などと言っているもの。それからシロアリを頑丈な箱に入れておそるおそる船に乗せる、なんていうのもありました。キリスト教徒の国ではやはり箱船はもっと身近なんでしょう。でもってそれがパロディや風刺になってしまう。日本では宗教関係って茶化されることはあまりないですからねえ。で本書では「どうして縞模様の動物がいるのか?」「どうして種のつながらない生物がいるのか?」などをもっともらしく箱船に結びつけて書いている。確かに生物をひとつがいずつ選んで、なんていうのは人間側からのことで、選ばれる動物たちはたまったもんじゃないし、ましてや選ばれない動物にしてみれば! 語り部である生物を推理するのもまた楽し。
1章がそんな感じなので、ははあ、これは聖書にのっとって世界の歴史を説明して行くのに違いない、と思うとあっさりと2章で裏切られます。第2章「訪問者」は現代の話で、クルーズ船がテロリストにシージャックされるというもの。1章とのギャップに戸惑いながら恐る恐る読み始める。ここでへえっと思ったのは、テロリストがテロに厳しい国とそうでない国とに乗客を分けるのですが、日本人はもっとも寛大な国の中に入れられる。そういうイメージで見られているのでしょうかね?
3章「宗教裁判」は虫VS人間の裁判。と、まるでとりとめのないようだけれど、このあたりからははあ、この本の「世界の歴史」の「歴史」というのは「歴史は繰り返す」ということなのだ、ということが判ってくる。で、読み進めるうちにそれは確信に変わるのだけれども、そのあたりから急に本を読み続けるのが苦痛になってくる。というのも、例えば長編小説だったら、読み進めるとともに話が進んでいき、変化していく。短編集であったなら、いろいろな独立した話の集まりでバラエティーに富んでいる。ところが本書はまるで短編集のようにいろいろな話が並んでいるのだけれども、それらの主題が同じであるから、やや飽きるのであります。でも決してこの本がつまらないと言っているわけではなくて、ただ図書館で借りて読む、というのが合わないのかもしれません。一気に読むよりも少しずつ読んでいくほうがいい感じ。というわけで、読みたくなった方にはぜひお買い求めになることをお薦めします。で、途中疲れてきたと書きましたが、でも最後はよかった。最後の章で、こうくるとは……参った、という感じです。我々は心地よい夢を見て、そしてまた繰り返すしかない。
ところで東氏は結構好きな装幀家です。地味だけれどきちんとした仕事をされている。で、白水社の仕事をたくさんやられているので、白水社の方かと思っていたのですが、違うんですね。本のデザイン料というのは、一般の方が想像するよりもはるかに安いのですが、白水社は特に……。なのでその白水社の仕事をたくさんやっているというと、余計なお世話だけれどちょっと心配になってしまう。けれど出版社の名誉のためにも言っておきますと、デザイン料の安いところは、いい本を出しているところが多いです。いい本を世に出すためならデザイナーも皆協力するんでしょう。そういう本が売れない時代なのは悲しいですが。
2000年01月29日(土)00:14 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
この記事にコメント:

Name: Mail/URL:
情報を記憶しておく

『風がいい島』 撮影=岩合光昭

by IWAGO Mitsuaki

Amazonで見る

ISBN4-09-680419-3
1999年/小学館
2200円
ブックデザイン:
鈴木成一デザイン室
ハワイの写真集なんて聞くと、ビーチとかフラダンスとかが頭に浮かんで、別に見たくなーいなんて思ってしまいますが、この写真集は「え? これハワイ?!」と思うはず。それもそのはず、ここは西ハワイ。だいたい西ハワイなんて知ってました?保護区に指定されているので、勝手に入ることは出来ないし、許可を受けて入る場合も、着るものから機材まですべて一度冷凍されて、種や虫を持ち込まないようにしなければいけないのだそう。そんな西ハワイで撮られたこの写真集では、海や空の美しさはもちろんだけれども、何と言ってもイキイキとした鳥達に魅了されます。撮影は動物写真の第一人者、岩合氏。アサヒスーパードライのCMで一般にも有名になりました。鳥って、哺乳類に比べると、表情がない、なんて思っていましたが、撮る人が撮ると違う。ちゃんと皆違う顔をしているのね。オオグンカンドリという6メートルもある大きな鳥がいて、こいつは自分では魚を捕れないから、他の鳥から取り上げるイヤなヤツなんだけれど、嵐の日には一生懸命羽でかばってヒナを守ってる。そんな鳥の親子はとってもいい表情をしています。
悲しい写真もあります。保護区であっても海はつながっているから、ゴミはどんどん流れ着いてくる。人間のせいで食性が変わった鳥が、全身ハエまみれになりながらハエを食べている写真は衝撃。
いろんなメッセージもあるけれど、ぼんやり眺めているだけでも、とっても気持ちいい写真集。ページの間から風が吹いてくるような、「風がいい写真集」。文句なしのオススメ。
ところで、小学館が出しているこのサイズの写真集って、安いし、場所もとらないし、いいですよね。写真集は豪華でなければ、なんていうのはもう時代遅れかも。
2000年01月19日(水)11:27 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
この記事にコメント:

Name: Mail/URL:
情報を記憶しておく

«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 132 | 133 | 134 |...| 137 | 138 | 139 || Next»
since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.