Jump to navigation
«Prev ||
1 |
2 |
3 |
4 |...|
49 |
50 |
51 ||
Next»
『影踏み』横山秀夫
ISBN-439663238X
2003年11月
祥伝社
1700円+税
336頁/四六判上製丸背
装幀=新妻久典
カバー写真=奥林千明
横山秀夫というと硬派な警察小説のイメージがあるのだけれども、この本はちょっと毛色が違う。主人公・真壁は「ノビカベ」と渾名されるノビだ。ノビとは泥棒の中でも、深夜寝静まった民家に侵入して盗むという手口のこと。こういった符丁のような言葉が次々出てくるところや、警察の内部が描かれているところはいつもの通りだが、決定的に違うのは……。
真壁の耳の中では声がする。死んだ双子の弟の声が。それは幻聴などではなくて、真壁は彼と会話ができるし、記憶力抜群の弟は手助けにもなるのだ。こういった非現実的な設定が他の作品にはなかったところ(私が今までに読んだ範囲で、だけど)。取り上げられる犯罪もそんなに悲惨なものではなくて、人が死ぬ話もあるがもちろんノビである主人公が殺すわけはない。
泥棒の兄と耳の中にいる死んだ弟、その二人による謎解きは、普通の人には見えないようなものが見えているようで楽しい。シりーズにしていつまでも続けられそうな気がするが……そうはいかないことがわかる。兄弟の関係、親子の関係、そういったものから目をそらせていては先に進めないのだなあ。
about book design...
本文はイワタオールド。
『魔』笠井潔
ISBN-4167717182
2007年2月
文春文庫
648円+税
304頁/文庫判並製
PHOTO=伊藤敦司
デザイン=関口聖司
ストーカー被害に悩む女子学生、父を亡くし、拒食症を再発した女性の謎の失踪事件……。サイコセラピスト・鷺沼晶子の依頼を受けた私立探偵・飛鳥井が、現代社会を揺るがす“魔”に挑む。社会病理を鮮やかに描き、驚愕の謎解きをも達成した傑作ミステリー。(カバー表4より)
朝日新聞の文庫の書評に載っていたので借りてきたのだけれども、シリーズ3冊目だったらしい。カバー表4の紹介のところに書いておいてほしいなあ。とはいってもそれぞれ独立した話なので別に支障はないのだが。
うーん、「驚愕の謎解き」ってほどではないなあ……。それにメンタルヘルスに詳しい方ではないのだが、そんな私が読んでもなんか安直な印象を受けてしまうような……。もう1篇のほうも、そんなに簡単じゃないだろ、という感じだし。
単行本は「本格ミステリ・マスターズ」のシリーズに入っているんだよね。このシリーズ、まだ1冊しか読んでないけれども「これが本格?」という印象だった。本格ミステリって何?
about book design...
前に「文春文庫は凸版明朝」というのを読んで、見本にない書体だからそうなんだろうと思っていたのだけれども。
先日
フォントブック[和文基本書体編] というのを購入して、そこには凸版明朝の見本が!……しかし、なんか違うんですけど。リュウミンKO?
『ららら科學の子』矢作俊彦
ISBN-4163222006
2006年6月
文藝春秋
1800円+税
480頁/四六判上製丸背
装幀=石崎健太郎
イラスト=手塚治虫
タイトル=山田哲朗
有名なのに読んだことない作家の本を読もうキャンペーン第三弾。といっても今回のは受賞後第一作ではないし、そもそも読んだことないと言ってもゲラやら文芸誌の連載やらでは読んだことはあるのだ、ただ本の形で読んだことがないというだけで。
本当は図書館に着いたときには違う作家の本を借りるつもりでいた。しかしその本を開いてみるといきなり生々しい性描写から始まっていて、別にそういうのが出てくる本が嫌だと言うわけじゃないけれども最初からだとちょっと引くなあ。で、あてをなくして棚の間をうろうろするうちに出会ったのがこの本。
最初の頁をちょっと読んだだけで引き込まれる。わくわくする。
この前に読んだ
『夢を与える』もねえ、最初はわくわくする感じがあったんだよね。けれどもその比じゃあない。将来有望の最年少芥川賞作家も“恐るべき子ども”と言われた矢作氏にはかなわんということか。まあ矢作氏の若い頃の作品を読んでいないので、これが元々なのか、それとも年の功なのかはわからないが。
主人公は学生運動の最中に中国に渡り、30年ぶりに帰国した男だ。30年というのは微妙なタイムマシンだよね。携帯電話に茶髪の若者……見慣れぬものに驚くけれども、まったくどうしてよいかわからないってほどじゃない。バブルを経験して町並みはすっかり変わったようでもあるけど、変わらず残っているものも意外とある。
そんな様子が面白くってぐんぐん読み進めてしまう。ああでもこれが面白いと思えるのは東京出身だからだろうなあ。今の東京も昔の東京も知らなかったら、主人公の目に映るそれらの混在した光景を想像することができないだろうから。そしてもうちょっと上の世代の人の方がもっともっと面白く読めるに違いない。学生運動とか文革とかをリアルに体験した人ならもっと、ね。
登場人物にはヤクザまがいの人々が多いのだが、みななかなかのインテリなのである。日本人の身なりや、新品の車、あちことで建設中の建物を見て「本当に不景気なのか?」といぶかる主人公に、ヤクザまがいな友人が言うセリフがいい。
「貧困っていうのは天然痘と同じさ。死の病だが、そのうちどうせ特効薬がうまれる。科学の敵じゃない。しかしな、貧乏は風邪みたいなもんだ。特効薬なんかできっこない。だいたい人によって症状も違う。三十九度の熱出しても、会社へ行く奴は会社に行く。くしゃみひとつで寝込んじまう奴がいるように、貧乏で社会を休む奴もいる。日本は今のところ貧乏じゃない。しかし、貧困には喘いでる。だから、お前には見えねえのさ」
about book design...
本文書体はなんだろ、にゅるっとした「な」や返しのない「に」を見てA1明朝かとも思ったんだけど、よく見ると違うなあ。
カバーは図書館の本なので外せないのだが、穴があいていて、そこから表紙のアトムの漫画が見えている。
『夢を与える』綿矢りさ
ISBN-4309018041
2007年2月
河出書房新社
1300円+税
308頁/四六判上製丸背
装幀=泉沢光雄
カバー写真=笹原清明
有名なのに読んだことない作家の本を読もうキャンペーンは奇しくも直木&芥川賞受賞後第一作を読もうキャンペーンに。図書館で借りたのだけどすごいなこれ、2月末発行で3月頭にはもう14刷だよ。単に芥川賞受賞だけじゃそんなに売れなかったろう。最年少受賞、しかも直木賞も金原ひとみで若い女の子のツーショット写真はいろんなメディアに載った。あれを見ていたときは、作家の選ぶこれらの賞は出版界の広告塔なのだ、と思ったのだけれども。だから受賞後第一作が子役を主人公にしたものだと知ったとき、この人なかなかすごいぞ、と感じたのだ。周りに持ち上げられる子役を書くことは、最年少だ女子大生だと自分をもてはやす周りへの皮肉なのではないか、と。なので結構期待して読み始めたのだけれども……。
つまらなくはない。どんどん読める。けれどもねえ、できごとを時系列順に追っているだけの作文のようでフラットな感じだ。子役を主人公にするのもそんなに珍しくもないし。10年以上前に
子役白書という本を読んだことがあるが、文章はつたなくても本人の体験もおそらく入っている分面白かったかもしれない。
素直にデビュー作や受賞作を読んだ方がよかったかもね。
(以下ネタバレ)
ラストには全く救いがない。ラスト以前に、中学時代の友人の家に行くが引っ越したあとだった、というところがかなり容赦なくて、ラストはそのだめ押しのようだ。ああでもここまで残酷な終わり方が書けるのはやっぱり若いからなんだろうなあ。歳を取るということは息の根を止める手に力を入れ続けることができない、ということかも。
about book design...
本文はリュウミン。
カバーに女の子の写真を持ってくると主人公のイメージを固定しそうだけれども、目を伏せた横顔だからそんなことはない。
«Prev ||
1 |
2 |
3 |
4 |...|
49 |
50 |
51 ||
Next»
since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.