ISBN978-4-02250272-8
2007年4月
朝日新聞社
1890円
420頁/四六判上製丸背
装幀=町口覚
初・吉田 修一。
朝日新聞の文芸回顧に載ってた……ってそれもそのはず、朝日で連載していたのね。ずっと朝日新聞なのに読んだ記憶がない……途中で新聞を止めたりして読めない日があるのが嫌で新聞小説を読まなかった時期があったので多分そのせいだな。桐野夏生さんの『メタボラ』からまた読むようになったのだけど。
あとタイトルからピカレスク小説みたいなものを想像していたので、あまり読む気がしなかったのかもしれない、毎朝読むには不向きじゃない?
が、実際は悪人とは何か?を考えさせられる小説であったよ。
保険会社に勤める若い女性が殺される。
直前に会っていた、老舗旅館の息子である人気者の大学生と、出会い系で知り合った工員。
といっても犯人探しがテーマなのではなく。
犯人は法で裁かれることになるだろう。殺人は間違いなく悪である。でも彼は悪人なのだろうか。祖父を病院に送迎し、それだけじゃなく近所の独居老人の買物まで引き受ける彼は悪人なのだろうか。自分を侮辱した女を助けようとしたのに悪人なのだろうか。好きになった女性を守ろうとする彼は。
一方、殺さなかった男は悪人ではないのか? 人の命すら笑って茶化す彼は。
と書くと後味の悪い小説のようだが、あちこちに救いもあるので嫌な気分にはならない。
新聞小説って、最後はだらだら続くか、急に終わるかするものが多い気もするのだけれども、これは最後まできちんとしていたなあ。
悪人とはいったいなんなのだろうね。
ISBN978-4-16-326220-8
2007年8月
文藝春秋
1333円+税
336頁/四六判上製丸背
装幀=野中深雪
装画=佐伯佳美
今年最初の本は初・道尾秀介。
大学助教授の息子が飼い犬に引っ張られて交通事故にあってしまい、それを目撃した大学生たちを主人公にした青春ミステリー。
なんかその「青春」ってのがひっかかって、読む前はどうかなと思ったけれども、読み始めてみると想像したような青臭いものじゃなくてなかなか面白い。そして登場人物も結構魅力的。
ただミステリとしてはちょっと、かなあ。少し強引なところもあるし、ちょっとあざとい感じのするひっかけもあったりして。といいつつまんまとそれにひっかかり、真相がわかってほっとしたりもするんだけど。
別にミステリにしなくても、この登場人物たちの人間関係をもっと深く書いた青春モノにしてもいいかも……ってそれじゃ読もうとしなかったか。
旬な作家なので、他にももっと読んでみよう。
ISBN4-10-136918-6
1992年10月
新潮社
857円+税
592頁/文庫判並製
カバー装画=藤田新策
デザイン=新潮社装幀室
なんと初・宮部みゆき。
他人の名前や身分を乗っ取って暮らす女性……というのに東野圭吾の『幻夜』を思い出す。
でも『幻夜』に比べるとずっとずっと後味がいい。それはきっと彼女もある意味被害者で、そしてその行動が決して非情なだけではないからか。
多分この読後感と、犯人だからってただただ憎むべき相手ではない、感情のある人間に描かれているところが人気の理由なのかな。
ISBN978-4-480-80410-5
2007年9月
筑摩書房
1600円+税
240頁/四六判上製丸背
装幀=有山達也
中学だか高校だかで文学史を習った。で、そのとき必ず出てくるような名作でも、その後読むことのないものも多い。そしてその文学史で習ったばかりに誰もが読む気をなくした本が……それは田山花袋の『布団』。だって「女にふられてその布団に顔を埋めて泣く」みたいな変態チックな解説がついていたのではなかったか。それを見て読もうと思う人がいたら驚きだ。
この本の著者の中島京子は、そんな『布団』を『FUTON』として現代に蘇らせた人である。なんて物好きな。さぞかし変わった人に違いない、と思いながら『FUTON』ではなくこの『冠・婚・葬・祭』を最初に読んでみた。
そんなイメージを持って読んだら、とても真っ当な小説であった。そして冠婚葬祭という、身内のごたごたやらどろどろやらが出てくることがテーマと思いきや、どれもとても清々しい話で。予想との違いに戸惑ったけれども。
これはやっぱり『FUTON』を読まないとね。